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君は永遠にそいつらより若いのペインのレビュー・感想・評価

3.9
今月27日の米アカデミー賞作品賞受賞も期待がかかる『ドライブ・マイ・カー』が、昨年の邦画の目玉作といえば間違いないのだが、一方で日○アカ○ミー賞に全無視された『あのこは貴族』や、本作のような小さいながらに称賛に値する作品がその裏に身を潜めているのもまた事実。

芥川賞作家、津村記久子の『君は永遠にそいつらより若い』の映画化。その未読の原作そのものの素晴らしさもあるのだろうとは本作を観て感じた辺りだが、本作の映像化における的確さ、低予算邦画にありがちな“ちゃちっぽさ”を感じさせない演出もまた見事。

バイトや就活、セクシュアリティ、知人の死やトラウマ、暴力や児童虐待、ネグレクト等、様々な問題が説教臭くなく浮かび上がり、登場人物がさらり発する言葉にはっとさせられる瞬間も何度も。個人的には似ているとまでは言わぬまでも、岩井俊二監督の『リリィ・シュシュのすべて』、吉田大八監督『桐島、部活やめるってよ』、三浦大輔監督『何者』なんかを思い出すような近い味わいがあり、これら作品が好きな人はハマりそう。これら作品は決してキャッチャーで万人に開かれた見易い作品とは言い難いけれど、日本映画の旨み、強みが凝縮されていると言える。

『あなたの番です』や『最愛』といった人気地上波ドラマにも引っ張りだこな、主演のお二方(※佐久間由衣さん、奈緒さん)も本当に素晴らしい。監督と入念に“映像に映らない”キャラクターの履歴書作りをしたというのも凄く功を奏していたのではないでしょうか。佐久間さん演じるホリガイのあの一見間の抜けたような抜けの良さに潜む繊細さ。👓のヨシザキ役の小日向星一さんも舞台挨拶とか見ると全然喋り方も雰囲気も違って芸達者ぶりに驚きました。

また、佐久間さん演じる主人公ホリガイのバイト先の後輩であるヤスダが、“ち○こが大きすぎて”…とホリガイに悩みを打ち明けるくだり爆笑と同時にあまりに切実で泣けてもくる(カラオケ🎤で玉置浩二メドレーを入れるホリガイ👍💯)。

ややショットの弛さや、映画全体が停滞する瞬間(※テンポが早い遅いではなく)も感じなくもなかったけれど、それをしても余りある昨年のダークホース的1本だと思う。
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