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アウステルリッツのyopiのレビュー・感想・評価

アウステルリッツ(2016年製作の映画)
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群衆3部作
〈国葬〉
〈粛清裁判〉
〈アウステルリッツ〉

さまざまな時代の"群衆"こそ
その時代を作った人々の顔であり、
それは現代の私たちとどう違うか、
私たちはいまどんな顔をしているか
象徴的に見せていく3部作。



日本で公開していた時に
国葬を観に行ったものの、

ほか2作品は都合が合わず残念だったので
U-NEXTの配信ラインナップに感謝。



史上最悪なホロコーストの現場
ベルリン郊外の元強制収容所。
今は、記憶を現代に繋げるための
博物館としてひらかれ、観光客で溢れている。


モノクロ、意図的な構図
ガイドの解説の声、環境音。
観る側の想像力が求められる映像が
淡々と続く作品。



記念撮影する家族。着信音がなる携帯。
座り込んでいる人。水を飲んだりする人。

ずいぶん呑気だな、とか
こんな所で何してるんだ…とか
思う光景もあったけど、

じゃあ、現代で日々生きながら
自分たちの過去の出来事に触れる時、
どんな状態なら、正しく触れたことになるんだろう?
と考えてしまった。

ダークツーリズムの経験でいえば、
私の場合は修学旅行がすぐに思い浮かぶ。
記念館で話を聞いて傷心したあとに、
おいしいご飯を食べたり、
海岸で遊んだことを思い出した。

どれだけ当時のことを想っても
現代の自分の行動は失礼になりうるし、
完全に受け取ることはできないし。

でも、知ろうとすることが大事
ってことしか私には言えなかった。




収容所の中でごった返す観光客を映す窓
1人ずつ室内から外へ出てくる扉。
ひとつひとつの画角に意図を感じた。

さらに言えば、
記念撮影をしたり、水を飲んだり、
冗談を言ったり、
なんてことない日々を
過ごしていた人たちが突然捕まって、
粗悪な建物にぎゅうぎゅうに閉じ込められて
明日殺されるかもしれないと怯える日々を
過ごしていたことが想像できる撮り方だった。


つい、自分とは少し違う世界で起きたことだと
思ってしまう(思いたい)歴史だけど、

群衆を観る自分もまた
現代の群衆の一部である
という気づきを得た。

答えは出ないけど、
過去から学んで考え続けることと、
自分を俯瞰して見ようとする意識を
持たせてくれた作品だった。
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