ごんす

セイント・フランシスのごんすのレビュー・感想・評価

セイント・フランシス(2019年製作の映画)
4.8
34歳のブリジットが夏の短期のナニー先で出逢った子供フランシスとその両親。
彼女達と接するうちにブリジットの心境に変化が訪れる。

『わたしは最悪』とかなり近しいテーマを扱いながらここまでアプローチが違うとは。
比較してあちらを腐したいわけではないけど断然こちらが好き。

前半のブリジットの行き当たりばったりに男と関係を持ってしまう所なんかはあらら…と思ってしまうし、こんなナルシストギター講師でも良いのかよとヒヤヒヤする。
しかし何かうまくいってない時ってあぁいう人物に惹かれてしまうのは分かる気もする。
あの優しい方の男と正式に付き合わないのも分かるような分からないような…

しかしどれも彼女の人生にとって無駄ではないと思う。
本当に好きな人を見つけるとか、やりたかった仕事ができるようになるとかではない形で彼女は確実に成長した様に思う。
個人的に物語で登場人物(特に主人公)が大きく成長すると良くも悪くもフィクション度が増して観賞後感が微妙になってしまうことがあるけど本作の成長の仕方はグッとくる。
映画の冒頭とラストでちゃんと顔が違って見えるのが素晴らしい。

何度も引っ張り出してスミマセンだけど『わたしは最悪』との比較は自分にとって意味があるなと思った。
本作のラストシーンは大好きであちらは嫌い。
好みの一言に尽きるのだろうけど、やっぱり思想ぶっ込んできてる分あちらの方が合わない人は強烈に合わないんではなかろうか。
ただテーマを考えるとちゃんと賛否が別れている方が健全だと思うのであちらも凄い映画なのだと思う。

男性も観てほしいと言われているような映画は観てみようと思うのだけど本作もそういう要素は多かった。
脚本がとても丁寧なので“女が大変なの分かれ!”と主張している様には一切感じない。
男性の想像を超える女性の身体的、精神的な辛さを教えてくれるだけなら他の映画でもあったと思うけどこの映画は自然と人に優しくしたいとも思わせてくれる。

フランシスとの関係も年の離れた友情モノのようにも観れて最高だし夏映画、夏休み映画としても最高だった。
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