鮭茶漬さん

東京リベンジャーズの鮭茶漬さんのレビュー・感想・評価

東京リベンジャーズ(2021年製作の映画)
3.0
日本映画はいつまで不良映画を撮るつもりなのだろう? 全くもって興行に成長を感じない。まず、これだけの売れっ子を起用させたことに監督の采配に拍手だ。スケジュール調整はハンパ無かったと思われる。そして、原作の切り取り方も上手かったと思う。

主演は北村匠海、そこに重要キャラで吉沢亮を持ってきたのも偉い。大河ドラマ「青天を衝け」で役者としての格を上げた彼を起用することは先見の明が光ってると言える。その他にも、旬の杉野遥亮、不良芸ばかりの鈴木伸之、演技派の磯村勇斗、朝ドラ「おかえりモネ」の好演も光った今田美桜と清水尋也と、これからの日本映画を背負う人気者が勢揃い。ただ、やはり山田裕貴の存在が一際際立っていたのが言い逃れしようがないだろう。

まず、色気がハンパ無い。元はチャーミングで愛嬌のある性格をしている彼だが、まるで歌舞伎の女形のような鋭い流し目でスクリーンを切るように視線を流す。表情で語れる役者は本物と言うが、彼はとんでもない早さで、その域に達したようだ。そんな愛されキャラである山田裕貴が、どう変化すれば、こうも冷静さと狂気を共有した人物像を体現できたか、原作のドラケン像を、より魅力的なキャラクターに仕上げていた気がする。売れっ子の中でも、当たり役であり、MVPと言えよう。

この「東リベ」が、EXILEがやってきたような不良映画と明らかに異なるのは、山田裕貴演じるドラケンの「不良(オレら)の世界は不良の中だけで片付ける。東卍(ウチ)のメンバーはみんな家族もいるし大事な人もいる。一般人に被害出しちゃダメだ。周りの奴、泣かしちゃダメだ。下げる頭、持ってなくてもいい。人を想う心は持て」という台詞に表われている。要するに、不良という狭き世界を、不良自身が自覚し、その中での決闘として昇華していること。実に昭和である。しかし、それは同時に、社会悪にはならずに、勝敗を決め、自分らの世界だけにカタルシスを求めたことにある。

この価値観で不良漫画を書いた原作者には称賛を贈りたい。他の同ジャンルとは全くもって礼節のレベルが違う。身勝手な抗争に、無関係な人々を巻き込んでしまっては、テロリストと変わらないし、例え、そこで勝負が付いても、何の美談も生まれない。この映画は、北村匠海演じる主人公の過去の憂いと、愛する者を守る決意が描かれているわけだ。暴力を暴力で返して美しいわけはないが、狭い世界観と価値観で対峙する、昭和チックな正義感のぶつかり合いでこそ、美談が生まれた。

わきまえるものと、わきまえられないもの。東リベの格好良さと、昔ヤンチャだった話のダサさの違い。ここって結構、重要なポイントだと思う。

※この記事の著作はROCKinNET.comに帰属し、一切の無断転載転用を認めておりませんので、予めご理解のほどよろしくお願いいたします。
鮭茶漬さん

鮭茶漬さん