蛇らい

まともじゃないのは君も一緒の蛇らいのレビュー・感想・評価

3.3
清原伽耶は与えられた場所で女優としてのキャリアをどう積んで、何を目指すのかという意思を演じたキャラクターから感じた。小泉孝太郎のキャスティングも素晴らしい。世界を変えようみたいな薄っぺらい自己啓発をしていそうな風貌と、小泉進次郎を彷彿とさせる真面目な顔でそれっぽいことを言うキャラクターの見え方の意地悪さが秀逸。小泉孝太郎のキャラを支持する人々が多数いて、崇拝しているという構図で「まとも」になることへの疑問を投げかける。

「普通」じゃないと「まとも」じゃない認定をされるところまで追いやられた時代背景の批評性が、『婚前特急』からのアップデートされた点だ。主人公2人は現代の世間一般的な普通には当てはまらないかもしれないが、至ってまともである。

彼らのように多種多様な人々と会するようになった世代の窮屈さをうまく捉えた作劇。同時に、自己評価に不必要な判断材料の母数が増えすぎている問題も提示できている。

世の中にはまともだけど、まともじゃないとされる人が一定数いて、安直に言えば決して1人じゃないよねというポジティブなメッセージの反面、個性という概念を照らし合わせたときに浮かび上がる「まとも」に迎合しようとする人間の臆病さも併せ持つ。
蛇らい

蛇らい