アンビエント音楽の大家故ヨハン・ヨハンソンの最後にして最初の映画監督作。
全編、シュールな建造物と空だけが映り、そこに20億年後の人類からメッセージが届いた設定でティルダ・スウィントンのナレーションとヨハンの音楽が流れるだけの映画である。
睡眠音楽のマエストロ・ヨハン・ヨハンソンならではのこちらを試すかのような心地よいリズムによってタルコフスキーにも似た微睡みと戦いながら、途中で挫折する時もあったが何とか完走した。
眠れない夜にピッタリで、こちらの脳波がアルファ波に達した時、遂にティルダ・スウィントンのナレーションは本当に未来人からテレパシーで送られてきたメッセージなのかもしれないという感覚に囚われてきた。
そうなると、恐ろしく壮大で気の遠くなるような孤独感、異常なほど長い歴史を持つ宇宙の存在、儚い地球、集合意識体としての人類を感じることが出来た。
この壮絶なリアリティーが己の中で産まれる感覚は、まさに映画体験として特異ながらも究極形とも言える2001年宇宙の旅に近い領域に連れていってくれる。またヨハン関連から映画「メッセージ」や「DUNE 砂の惑星」の後日談にも見えてくる。
個人的なことだが、かつて退行催眠療法の実験体になった時に見た精神領域が見せるビジョンに浸かった時とよく似ていた。
空想なのか、かつての記憶なのか、細胞に刻まれたイメージなのか、何なのか分からないけど、無限宇宙に落とされたような懐かしくも恐ろしい感覚。
もし、この作品を見て眠らずに眠気の向こう側に行けた時、そこには20億年後の記憶が己の中に芽生える。
そんな感覚を味わえる。
そんな体験は、この作品でしか味わえないと断言しよう。