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Kill It and Leave This Town(原題)のyのレビュー・感想・評価

4.0
アヌシー国際アニメーションフェスティバル 2020出品作品。
A4コピー用紙に鉛筆で殴り書きしたようなキャラクターを、更にコピー用紙をセロハンテープで幾つもくっつけた背景の中で動かす。そこに確かにあるリアリティ。空虚な街並みと殺人。基本的にモノクロな世界に、「火」や「血」など、ワンポイントで赤が映える。よくある技法だとは思うが、作品にハマっている演出だと思った。
この映画においては、水や空気中の微粒子の中に世界があり、内側から外側へと広がっていき、世界によってルールが異なっている。入れ子に次ぐ入れ子で、まるで『リック・アンド・モーティ』の世界だ。映像的にロジカルでさえあれば、そこにどのような世界が広がっていようと自由な空間なのである。巨人すら普通に存在する。とある世界でショップの店員のおばはんが歌いながら魚を解体する印象的なシーンがあるが、それが別世界において鳥が人間を同じように解体するシーンとして反復されたりと、主体と客体とを入れ替えることにより変わらぬはずの残酷性を強調することで、人間本位的な社会をシニカルに捉えている。或る老婆の若かりし頃の青春を振り返るという大きなテーマの中で、あらゆる脈絡のない面白映像が再生される。バスの前で転がる生首が発していた謎の言葉が実はクロスワードの答えを逆再生で言っていたというナンセンスな伏線とかも好き。
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