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僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46のryotaのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

こちらの作品は、普段あまり見ないジャンルと世界のものなので、ちょっと変なこと書いちゃうかも知れませんが、あくまでただの通りすがりの勝手な意見と思って、聞き流してください。

とても奇妙で怖い映画(映画というジャンルなのかもよくわからない)という印象でした。ドキュメンリーということですが、作り手はこのグループが大好きなことがひしひしと伝わるくらい、ライブシーンはカッコよく思い入れたっぷりに編集しているし、映像もフォトジェニックなものに仕上げており、リアルな事象を追いかける、生々しい作品とはちょっと質が違いました。でも2時間20分は長かった。。。

おそらくアイドルファンなら誰でも知っている(私は少しかじってるくらいでそれほど詳しくはないです)グループ「欅坂46」の変遷を辿っているのですが、内容の中心はやはりデビューから一貫してセンターポジションを任された平手友梨奈の苦悩を、本人や周りメンバーのインタビューから描いているものでした。アーティストしての苦悩をテーマにした作品は過去にも色々とあって、どん底にまで落ちたり、究極は自死にて決着する結末もあったりしました。こちらも、その一歩手前くらい追い込まれたような状況が映し出され、見ていて痛々しくなります。

平手友梨奈がグループとしての方針とはどうしても合わず、且つ表現者としてある意味究極のパフォーマンスを目指すが故にどんどん自分を追い込んで(追い込まれて)いって、何度も倒れ込み、最後は脱退ということになり、映画は彼女が抜けた後、これから再出発するんだーって感じで終わるのですが、この作品はあくまでもファンに向けた作品なのですよねきっと。そう考えるとかっこいいし、平手友梨奈に同情もするし、応援もしたくなるし、何より魂のこもったパフォーマンスに酔いしれます。

でも、でも!私が見ていて終始引っかかったのは、素晴らしいアーティストとしての才能を持った一人の少女が、まるで虐められているようで気の毒に感じてしまったことです。最初は本人もやる気満々で周りに溶け込むようにして頑張っていたのに、だんだんとモチベーションが変化して、疲れるようになり、気持ちも乗らなくなり、それでも奮い立って、まるで曲の主人公(これがまた悲惨で、世の少年少女が抱える負の要因、ネガティブを全て背負い込むようなものばかり(それだけ)です。それがこのグループの特徴でもあり、確かに注目は浴びるけど、それはかなり精神衛生上危険なものであることは想像できます)を憑依させて、ギリギリまで自分を追い込んでいっては精神が破壊して卒倒する、の繰り返しです。言いたいのは、結局そう仕向けたのは周りの大人(製作者側)じゃないの?ってことです。本人が自分の責任において、ガンガン突き進んで自滅するなら話は変わりますが、どう考えても本人の意図しないところで追い込まれてしまっているように思えます。彼女の妥協しないアーティスト気質を利用して、どんどんつぶれていくのをほくそ笑んで銭勘定をしながら見ている大人の顔が浮かんじゃうんです。だから、メンバーが必死に彼女のことを心配し、考え、グループとしてどうしていくべきかを苦悩しているのに、その変遷を眺め、「お前たちどうする?どうすることもできないよね」みたいに眺めている作り手側がまるで悪魔的確信犯に感じて、ゾッとします。しかもこれがドキュメンタリーなわけだから、悍ましすぎます。この作品は、そのあたりは巧妙に避けて作られている(当たり前ですね)ので、何気なく見てると彼女たち本位で見てしまいがちですが、あまり詳しくない、いち映画ファンが見ると、その辺りのバックボーンの陰謀(言い過ぎかな)にホラー感を感じて止みませんでした。

結果、グループは解散(訂正。「櫻坂46」と改名して存続)になりますが、それってハッピーエンドなのでしょうか?一人の才能あふれる少女が傷つき、苦しんで、辞めていった、ということでしょ。平手友梨奈はその後女優として、ダンサーとして才能を発揮して元気に活躍されているとのことで、ひとまずホッとしますが、一歩間違えたら大変なことしちゃったんじゃないのって、なんだかそこ知れぬ恐怖さえ覚えたのでした。

以前「HIBIKI」という映画で平手友梨奈を酷評してしまいましたが、この作品を見て、彼女は孤高(ひとり)の天才気質なんだなっていうのがわかり、納得しました。平手さん、応援しますのでいいパフォーマンスを続けてください!
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