タナカリオ

望みのタナカリオのレビュー・感想・評価

望み(2020年製作の映画)
3.6
犯罪者の家族を描く作品は珍しくかいが、この作品は容疑者となる家族を『信じる』か『信じない』かで問うのではなく、終始『加害者だけど生きて帰ってくるか』か『被害者だが死んでいるか』で葛藤しているのが印象的だった。被害者でも加害者でも息子を受け止めようとする親、加害者として受け止められない妹、それぞれの葛藤とそれぞれの望みが交錯する。

舞台は1つの『家』であるが、よくあるような窓の外の風景による演出も使えず、閉鎖された家の中を主な舞台に、家族それぞれの葛藤や心理描写を飽きさせず描く。役者の演技、存在感によるところが大きいのだが、そのための家の構造、カメラワークはお見事としか言えない。

この作品の『望み』とは、変えられない事実とわかっていながら、それでも自分の希望を捨てない救済のようでもあり、苦しみでもあるように感じた。
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