Sanald

ドント・ルック・アップのSanaldのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
4.0
久しぶりに「すごい」と心から思う映画だったけど、かなり現実に即しているからこその胸糞悪さがあった。

あらすじはこうだ。
地球を滅亡させる規模の彗星が半年後に衝突するというのに、世の中の人は、研究者たちの訴えに耳を貸そうとしない。
金と権力に取り憑かれた政治家と大富豪は、この言説を利用してのし上がろうとする。
Don't look up! とは、彗星が迫っている現実を直視しない権力者の主張だ。

では、映画の中身を現実と照らし合わせてみよう。
人々を見下し、仮想敵を作り、破綻した主張で人々を扇動した、トランプ大統領時代を彷彿とさせる党集会。
「コロナは風邪だ」と言い張りマスクすらつけようとしない人々。
自分達に都合の悪いことは面白おかしく昇華させようとする、現代のインターネット。
地球の環境問題に警鐘を鳴らす若者を罵りmemeにする人々。

その全てが、現実だということに、改めて失望する。
この間見ていた「Emiliy in Paris」では「アメリカといえば、映画は全部ハッピーエンド」などと馬鹿にされていたけれど、この映画はアメリカだからこそ描ける最高の自虐映画だ。

この映画が生み出すリアルな表現は、最高の俳優陣だからこそ実現できたもの。
メリル・ストリープ、マーク・ライアンスが演じる堕落した政治家・億万長者は最高に毒が効いていた。
タイタニックの頃の面影など全くないレオ様の演技も最高だった。

ぜひいろんな人に見てほしい、そして一緒にディスカッションしてみたい。
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