ワンコ

ブックセラーズのワンコのレビュー・感想・評価

ブックセラーズ(2019年製作の映画)
3.7
【デヴィッド・ボウイ】

この作品は紙の本が好きな人に向けたオマージュだ。

作品に登場するのはマニアックな本の職業人だが、考えてみたら、どんな人だって、本に何らかの思い出のストーリーがあるのではないか。
コミックのコレクションが自慢の人だっているだろう。

それにしても、デヴィッド・ボウイが借りて返さなかった本とは何なのだろうか。
すごく興味があるし、そこは触れてないから、すごくフラストレーションが溜まった笑

作中で、多くの人がアートを所有しようとする割に、希少であっても本を所有しようとする人は少ないという話があった。

まあ、アートの方がストレートにインパクトがあるのに対して、本は蘊蓄を語らないと、その良さが伝わらないという難点はあると思う。

あと、本はベタベタ触られるという問題もある。

作家のサイン本を大切にしてるなんて人は結構いるように思うが、僕は、藤田嗣治が挿絵を描いたフランス語のかなり古い本を所有していて、でも、ベタベタ触られるのが嫌で嫌で人には見せないようにしている。

リトや絵なんかは、額に入れて、触られることはないけれど、本はなかなかそういうわけにはいかない。

随分前に、ある理由があって、「解体新書」はないものかと探したところ、神保町の古書店にあった。

値段は、確か、六百数十万円だった。
買えるはずがない。
それに、今は、もっと高いかもしれない。

僕の亡くなった父親は、まあ、多少本が好きで、小林秀雄選の日本文学全集を持っていた…、というか、今でも実家の書棚に置いてある。
50巻くらいからなる紙のハードケースに収まったやつだが、文学者や収容作品云々より、「小林秀雄が選んだ」というのが希少価値なんだと思う。
古書店だと買い叩かれるかもしれないので、いつか、メルカリに…、うそ。

本がテーマの映画もある。
ウンベルト・エーコ原作の「薔薇の名前」もそうだ。
中世、図書館が有名な北イタリアの修道院、そこには禁書が隠されているという噂が絶えず、一体、それは何なのか、次々と起こる殺人事件とともに、禁書が明らかになり…。
実は観る人の知識というより、教養が試される作品でもある。

最近の「騙し絵の牙」もある意味本がテーマだ。
松岡茉優さん演じる女性が、父の後を継いだ本屋で出版の企画もして、一冊3万円の豪華な装丁の謎の作家の本を売り出したところは痛快だった。

あと、ニューヨークの地下鉄の中で紙の本を読んでいるのは20代で、キンドルを読んでるのは40代だという話があったが、20代の方が感性に率直なのかもしれない。

40代は、きっと時代遅れと若者にバカにされたくないのだ。

中年よ、意地をはるな。
僕は圧倒的に紙の本派だ。

この作品は、紙の本が好きな人に向けたオマージュだ。

映画の内容にとらわれずに、自分と紙の本(漫画も含めて)のストーリーを思い出したら、より楽しいのではないだろうか。
ワンコ

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