竹野康治郎

空白の竹野康治郎のレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
3.9
今年、BLUEもあった吉田監督の新作になります。今回もヒューマンストーリーとしてとても重厚でありながら、善悪で判断できないもどかしさと、そのもやもやした心情とどうにも出来ない状況という、まさに「空白」の時を濃厚に描いた作品です。

BLUEもそうでしたが、とにかく日常の描き方が本当に凄かったです。
色々な疑惑をつけられた店長がいるスーパーでも日常的に買い物する主婦、一緒に働く人々、などなど生活における必要性と被害者、加害者、そして事件関係者などなどの非日常的なやりとりと、立場のあり方、人によって事象の捉え方が、とにかくわかりやすいがゆえに怖さと異常さが伝わってきます。

ヒューマンストリーというのを主人公だけでない、この事件に関わった人々すべてを丁寧に描き切ったことで、感情をぐちゃぐちゃにされるような内容でした。

タイトルにある「空白」この空白を埋めるために誰もが必死に生きているし、もがいている。これは事件に関わらず、誰かの何かにも繋がっているというジレンマ的要素もあります。
ただ、今回の映画はそこに僅かならがらの光があるということが全てでした。だからこその前半から中盤、そして終盤までの重厚感、重い、苦しい、キツいといったことに鑑賞している我々もその空白に巻き込まれないといけない。向き合わないといけないと思いました。

最後に、古田さん、松坂さんをはじめとするキャストの演技がこの苦しさを生み出す、迫真とも言えるものだったかと思います。

人と向き合うということを正面から考えさせられる作品でした。

2021年公開作品 30作目
竹野康治郎

竹野康治郎