さとちゃん

空白のさとちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

空白(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ずーっと心が痛いチクチクと、心に棘が刺さっていくように、ピリピリとした空気感が流れている感覚。疲れます、苦しいです。

この作品の登場人物のほとんどが、自分の感情を一方通行に押し付けている、そのような感じがした。でもその感情や行動に正しさも、間違いもあって、一言にそれは正しい、それは違う、とは言えないことが内包されているから、私はグルグル悩んでしまう、難しい問題だなと感じた。

「頑張っているのに頑張っているように見られない、そんな子もいるんじゃないかと思うんです」
「それを今更言うのはズルイよ」
ここにハッとさせられた

報道陣の対応が酷すぎた。そのままを伝えるのではなく、どちらかに印象が傾いてしまう報道のやり方。でも自分たちの知らないところで情報操作のようなものは行われているかもしれない…そう思うと何を信じていいかわからないよな

古田新太さんの頑固で自分の思う通りにならないものは問答無用で許さない、厳格な父親はさすが古田新太さん

「自分の娘が事故あって死んでしまった」その事実に、自分の考えに執着しすぎて周りの事は聞かずモンスター化していく様は見事

自分の娘のことを本当はよく知らなかった事に、離婚した妻から指摘され初めて気づき、そこから自分の娘のことを知ろうと、娘が好きだったものなどに触れて行き、少しずつ知ろうとするその姿勢が微笑ましくも、どこか悲しげ…

ラストの、印象に残っていて描いたイルカ雲の風景画が、娘が描いていた風景画と同じ風景が描かれていたと知り涙を流すシーン
その時の涙

松坂桃李さんは気弱で自分の主張がない。ハッキリしない、正直頼れるのか?と思う店長。

最後に、スーパー無くなって残念です、やきとり弁当好きだったんですよ。また開いたらやきとり弁当作ってくださいね。と声をかけられた、その時に、少しでも生きていてよかったなと思えていればいいな

添田に攻められ追い詰められ、弁当屋に電話した際に、添田が乗り移ったように、人が変わったようにブチキレる、その青柳が限界点を超えた演技、そこから自分の言った暴言に対して店員に謝る、本来青柳が持ってる優しさや真面目さを伝える演技、その温度差、素晴らしいです

追い詰められ自殺未遂するに至るまでの演技、この前見た孤狼の血日岡と全然違う

片岡礼子さん演じる最初に自動車で衝突してしまう女性の母親が素晴らしすぎる
「気の弱い娘になってしまったのは、親である私の責任」…娘を亡くしたはずなのに…グッと来ました

人が何かを失い心に「空白」が出来てしまった時、それを埋められるものは何だろうか?
簡単には答えは出せないけど、その一つに、周りの人々の存在や優しさがあるのではないかと

どこまでもリアルで、本当にこういう人いそう、いるよなこういう人、と感じられる。リアルであるが故に、心に刺さって考えさせられる作品だと思います
さとちゃん

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