狂うのなんて一瞬。人生が狂うのも、気が狂うのも、ひょんな拍子に急行直下する。その可能性は、私自身含め誰しもある。日常にはらむ危険と狂気と共に生きていくしかない。
この作品のしんどさと重さは、フィクションぽさがないからだと思う。派手さやドラマティックさもないし、「こんなこと現実にある?」とツッコむ余地すら与えてくれない。こんな人いそう、こんな事ありそう、こんな風になりそう、そのリアルさが怖い。息をするのも忘れるくらい…というのはまさにこのこと、強張りながら見る。
それにしても怒りってなんて強いエネルギー。ものすごく力を消耗するから、疲れるし怒り続けるって難しい。一方悲しみはキャパシティに関係なくどこまでも深く深く引っ張られるから、無自覚の力が働いていてこれまた消耗する。怒ったり悲しんだり…続けるのも難しいし、落とし所を見つけるのはもっと難しい。