吉田恵輔監督の得意とする人間の滑稽な姿を意地悪に汲み取りながら
それを誰にでも感じたことのある感情と合わせてコメディ作品へと昇華していく
嫌なやつですら、どこか人間的な滑稽さで愛くるしく見えてしまう
ただ本作は題材故に終始シリアスな展開
事故が残酷すぎるためコメディ要素は徹底的に抑えられている
描かれる人間の滑稽さはコメディではなく嫌悪感に繋がっていく
全てを憎むべきものとしてではなく
本人たちの正しいと思うことの重なりあいであり、それが状況で悲惨な方向へ加速させていく
残酷なものを包み隠さず描くことで
取り戻せない過去の過ちを際立たせる
事故で亡くなる女子高生役の伊東蒼の演技が自然すぎて
作品の生々しさをより真実味を持たせている
寺島しのぶの正義の押し付け感とか
人の嫌なところ汲み取って広げる吉田恵輔らしさは健在
それをコメディにせずドラマに落とし込むところは今までの吉田恵輔と違いを感じる
決して真っ当ではない登場人物たち
それでも日常は淡々と過ぎていったはず
それがたった一つの出来事でいびつさが露見して崩れる様は人間関係の縮図そのもの
他人事ではない居心地の悪さを感じながら
結局価値観が合わない人間関係の中で生きていかなければダメなんだよなと
いつもの吉田恵輔とは違う角度で人間の嫌な部分を浴びせられた