calinkolinca

空白のcalinkolincaのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
-
添田さんが娘が死んだ真相を知りたくて青柳店長に対してする行動と、自称「ボランティアとかしてるちゃんとした人間」、草加部さんが用事があるからとボランティアを断った女の子にかける無言の強要。あなたはどちらが本当の悪意だと思いますか?そう監督に問いかけられている気がした。
私にはすぐに激昂する高圧的な古田新太さん演じる添田さんよりこの、何かと人の力になりたがる寺島しのぶさん演じる草加部さんが強烈過ぎて、皆、彼女の持つ「嫌な善意」と対になってるように見えた。
藤原季節さん演じる野木くんの、添田さんの悪口を言いながらもマスコミから添田さんを守ろうとする姿は草加部さんと対照的に、人間の「善意」を表しているようなキャラクターで、私はとても好きだった。救いのない物語の中で、後半の絵を描く添田さんと野木くんの会話にはクスっと笑わされ、とても救われた。
押しつけがましい善意に救われた命。都合よく編集されたニュースによる印象操作。良かれと思ってした忠告。受け取ってもらえなかった謝罪。大事にしてこなかった人間から受け取る優しさ。
悪意と善意が絡まりあって、ひとりの少女の死から始まった物語はあるひとりの「死」から赦しの物語へと舵を切っていく。最後の父の行動も、娘に対する「赦し」そして「贖罪」なのだと私は感じた。そして、あの青年から青柳店長にかけられた言葉も。
彼は一生あの言葉を忘れないだろう。
calinkolinca

calinkolinca