ヤマカガシ

空白のヤマカガシのネタバレレビュー・内容・結末

空白(2021年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

映画としてのクオリティは素晴らしい。手持ちでの不安定な撮影は登場人物の心情を表しているかのようだった。

ただ内容に少し違和感。
この物語において花音の父親が絶対的な悪としか思えない。花音の死を嘆き悲しむという人間的な部分もあるけれど、物事の問題を全て周りの責任にして自分の過ちを認めない。だからひとつも感情移入できなかった。もちろん花音が無残な死を遂げたことには同情するけど。

そしてワイドショーはいくらなんでも誇張しすぎではないか。一般人の素性をあんなにも連日取り上げるものか。もちろんマスメディアの情報操作は問題だけれど、なんだか現実味を感じなかった。物語を成立させるための道具としての印象が強かった。

事故後のスーパーはほとんど客足が途絶えていたけれど、本当にあんなに閑散とするのだろうか。現実を見たことがないから分からないけど、やはり大袈裟に思えてしまう。

やはり、花音の死は不幸な事故だった、という言葉に尽きる。もちろん万引きは犯罪だが、死はそれに見合う懲戒ではない。そしてその花音を追いかけた店長も、店を守るために当然の行いをしただけだ。最初に轢いてしまった女性の運転手も急に花音が飛び出してきただけだ。むしろ花音の方に加害性がある。しかし世の中は死んだもん勝ちだ。死に勝る被害はないのだから。だから結果だけを見た時に花音を追いかけたスーパー側がクローズアップされ、非難の的となる。現場に立ち会っていない者は断片的にしか情報を受け取れないが、その情報を全てとしてはいけない。

最後にかけての父親の心変わりは少し急展開という印象。花音の絵を見たり化粧品を見つけたりして思うことがあったのだろうけれど、そんな事があってもあんな性格のヤツが自分の過去の行動を改められるのだろうか…。
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