久々に邦画で傑作を観ました。
全く予備知識なしに観に行ったので、冒頭のショッキングな事故シーンにびびりたおしましたが、その後の人間ドラマを語り過ぎず、でも浅く終わらせない手腕がすごい。無駄なシーンが一切なく、監督の美学を感じました。
コメディを抜きにした古田新太のシリアスな演技は素晴らしく（眉がやたら細いのが妙に気になりましたが）、イケメン要素を全て排除した松坂桃李も新鮮で、寺島しのぶのうざい正義感おばさんの生々しさも本当に素晴らしかった。
田畑智子だけ、あんなにお腹大きい妊婦がスクッと立ち上がれるかな？？というのが気になりましたが。
この映画を後味の悪い映画だと感じる人もいるかもしれません。誰も悪くないのに、みんな幸せにはなれなくて、みんなをかき回したマスコミが罰せられることもない。
でも、描かれたほんの少しの救いが、この映画を柔らかな光で包み込んでいて、それがすごくよかったです。
勧善懲悪でスカッとする、というのは第三者が求める救いでしかない。本当の救いというのはこの作品に描かれているように微かな光でしかなくて、でもそれが人を本当に救うんだと私は思います。
タイトルの「空白」は登場人物みんなの心の空白なのかもしれませんが、私は「空」と「白」なんだと思いました。
空に浮かんだ三つの白い雲。
それは親子が別々のところで見ていたものなのかも知れないし、一緒に見ていたものなのかも知れない。そこに会話はあったかも知れないし、なかったのかも知れない。そこをわざわざ描かない、説明させないのがすごく余韻があって好きでした。
