鰹よろし

スコルピオン テロリスト制圧指令の鰹よろしのレビュー・感想・評価

2.9
 お金に困窮していながら昼間から飲んだくれる、ダーツと射撃の腕がピカイチの弟。その腕を買われテロ組織スコルピオンへの勧誘もしくは組織の立ち上げに関与し、リーダー格として世界で暗躍している。いや強盗から女性を助けるためとはいえ偶発的に人を殺してしまい、別人としてその道を進む他無かったと見るべきか。

 人質交換任務を考えられ得る最高のカタチで成功させ、その功績とこれまでの経験が評価され、対テロ特殊部隊にスカウトされ実質昇進を成し遂げた兄。3年前に行方不明となり死んだと思っていた弟が、国の潜在的脅威であるテロ組織スコルピオンに所属していることがわかり、標的となるだろうモロッコへ単身乗り込むことに。

 一見対称的で対称的な道を歩む兄弟の関係から何を見つめられるのだろうか?というのがあまりピンと来ていないのだが・・・

 功績と経験が評価され対テロ特殊部隊にスカウトされてきたティムールという男を、女性の目で恋愛対象として捉え、プロファイラーとして分析対象として捉え、傍から勝手に恋敵として捉える傍ら、

 ある時期を境にテロリストの弟を持つ兄として捉えられ、そんな彼がウズベキスタンと諸外国で置かれる立場がまた多彩で、彼の住むアパートにおいて突入しようとする部隊と管理人とのやり取りもまた。

 スコルピオンに3人いるリーダーの内の1人を、情報分析官(?)は「経歴不明の謎の人物」と、プロファイラーは「スポーツ射撃の経験者」と、兄は「消息不明だった弟」と捉えており、彼を見つけ出すに当たり彼自身の動機を突き止めようとするプロファイラーと、いや兄を見つけりゃいいのだよと上官。

...といった様に、時と場合そしてその立場によりけりで対象となるその人物の捉え方に差異が生じるということを顕著に描き出そうとする意識がそこかしこに感じられる。

 また、昼と夜、光と影、光と闇、自然光(太陽光)と人工光(焚火込み)の使い方が特徴的で...

 昼間のガラス張りのオフィスビルは、内側にいれば内側の様子が蛍光灯といった人工光で鮮明に見えるのに対し、外側からでは自然光が反射して中の様子を伺い知ることができない。しかし夜になると自然光は失われ、人工光が内側から外側へと漏れ出し、外側から内側の様子が鮮明に見えてくる様になる。

 光は確かに対象となるモノを照らし出すが、向きや当て方当たり方によっては見え方を変化させ、また大小影を生む。逆光によりそのモノ自体が影となる場合もあるし、反射によりその対象を見えにくくすることがあることを、その人やその物を通して描き出している。

 さらには、兄の行動が蛍光灯や焚き火といった人工光と太陽という自然光の両方の下で描かれるのに対し、弟の行動は自然光の下のみで描かれる。これは国際テロ組織と対テロ特殊部隊との大枠の対比でもあるのかもしれない。

 故に兄は昼夜問わず活動している姿が描かれるのに対し、弟は太陽の下の行動のみで夜間の描写が無い(はず、多分)。唯一いや“唯二”描かれるのはテロへと勧誘された最初と、勧誘されるに至る経緯を見せる最後のみである。

 情報の捉え方の差異、昼と夜、光と影、光と闇、自然光と人工光、兄弟の関係を縮図に見るこれらの演出にはどういった意味があるのだろうか。

 全てを覆い隠す闇、闇を照らし出す光。光は時にモノを異なる姿で捉えさせ、また何かを隠し、闇を生むこともある...
 
 意味深な描写が数多くあるにも関わらずその意図を汲み取れないのが何とももどかしい。


「ザ・コンサルタント」(2016)...
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