メモ魔

街の灯のメモ魔のレビュー・感想・評価

街の灯(1931年製作の映画)
3.3
80年前の映画。
この頃はまだモノクロ映像の時代か。
カメラの受光量ダイナミックレンジが小さいからか朝や昼、夜の違いが映像からは読み取れない。
それか撮影時に使用する光源の出力調整ができないためか、、?
だからだろうな。シーンが切り替わるたびに時間帯を指定する説明文が入るのは。

恐らくだがこの時代は映像にした時に削がれてしまう情報量をいかに音声で補うかってところが重要視されていたに違いない。
そんな時代の中で、登場人物の声を奪って魅せるこの映画はその存在自体が奇抜でユーモア溢れるものだったに違いない。
[あえて削る]
この手法は面白いと思った。

音声をカットしてる分BGMでどう魅せるかって所が気を遣われてるなって思った。例えば朝、昼、夜で同じBGMを使ったり、登場人物の感情に合わせてBGMを変化させたりするなど。声がない分観てる人はBGMから情報を得ようと必死になる。普段映画を見ていてBGMにここまで耳を傾けることもそうないだろう。映画を観る上でのBGMの大切さを学ぶって点でもこの映画はいい教材になる。

さて映像技法や時代背景はここら辺にして、見どころについて。
よくこの映画を宣伝する謳い文句として
[コメディと愛に溢れた映画]
と評されるが、確かに直感的にはそうだなって思った。コメディの部分はイロモネアの[サイレント]を2時間観てるようなイメージ笑
勝手にこっちの頭がセリフを想像しちゃって笑えてくる。
1番笑ったシーンは2つかな。

1つ目は主人公が酔っ払いと一緒に車に乗るシーン。
[運転に気をつけて!]
[私が運転してるのか?]
のところ笑
運転してる人間が私が運転してるのか?はもう見てられないわ笑怖すぎる笑

2つ目はボクシングで鐘が鳴るシーン。
1930年代のボクシングは長いロープを引く形式の鐘を採用してたんやね。
その鐘がチャップリンの首に絡まっちゃってチャップリンがダウンする度に休憩になって、チャップリンが休憩場所に移動する度に鐘が引っ張られて試合が始まるっていう、、笑笑
普通にここは面白かった。笑いは時代も国も言葉さえ選ばない。

あと面白いなって思ったのはたまに人の動きが早送りになったりすることか。
この時代のビデオって手でフィルムを回す形式だったんかな?
だからビデオ回す人の裁量でフィルムが早くなったり遅くなったりするんよね。その味が映画に出てた気がする。
ってか人間80年でここまで進化するんだな。恐ろしいわ。

総評
モノクロから始まりカラーへ、そして今や映像と音声の三次元拡張まで映画の表現技術は上り詰めた。この映画はその映画の軌跡の源泉を見ることができる。
近年の最新技術搭載映画を観るのも楽しいが、こうやって映像技術がまだ表現技術に追いついていない頃の[いかに今の映像技術で表現の幅を広げようか]という工夫を見るのも面白いと思った。

涙を流すような感動こそ無いものの、昔の人は今絵が動いているのを大画面で見るだけで感動したに違いない。
絵が3次元に拡張されその世界に入り込めるようになったVRで感動する我々現代人と何ら変わらないのだ。
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