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Swallow/スワロウのmのレビュー・感想・評価

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
4.5
どれだけ愛した人間でも、そこに付随してくるものまで愛することなど不可能。
他者を愛するより、自分を愛することの重大さを痛感させられる作品。

お見事でした。本当に面白く、またメッセージ性を巧みに昇華させてあり、昨今の情勢に反映されていて、ぐっと魅了された。
最初は、異食症というセンシティブな内容を前面に押し出した見せ物のような作品かと思っていたけれど、濃厚な心理描写、古い考えの中で鬱屈し、それを跳ね除けるなど、メッセージ性が色濃く描かれていて、引き込まれた。

大企業の御曹司と結婚し玉の輿に乗ったハンター(ヘイリー・ベネットさん)はハドソン川沿いの豪邸での優雅な暮らしを楽しんでいた。夫から与えられる愛情が少ないことに不満を抱いていたが、しばらくして、妊娠が発覚する。そんなストーリー。

まず凄く書きたいのは、ヘイリー・ベネットさんの演技力!異物を飲み込んだあとの、恍惚感・安堵感・罪悪感、この一連を見事に演じてらして、息を飲んだ。これはもう悶えた。結構な異物(ネジや画鋲)などを飲み込むから、目を背けたんだけど、その表情だけは見たくて堪らなかった。

ハンターはお金のある家とは縁遠い生き方をしていたらしく、販売員を勤めていた時に旦那であるリッチー(オースティン・ストウェルさん)に口説き落とされた設定らしい。どうにか上流階級に慣れようとするが、上手くいかず、愛情不足と責任感に押し潰されていく。
そんな中で異食症になってしまい、紆余曲折あり自らの意志で生きていくことを決意する。

父との暴力的なやりとりやヘルパーさんの優しさ、少しずつ触れていく愛、それも後押しし、ハンターは自らを大切にしていく。
上流階級の服が似合っていたけれど、違う彼女はもっと可愛らしい。本来の姿に戻ったハンターが本当に可愛かった。

監督の祖母が強迫神経症だったらしく、とても精神疾患を丁寧に扱っている印象を受けた。けれど、それ以上に内面の豊かさにフォーカスを当てていて、万人が悩む、万人が共感してしまうストーリーになっていると思う。素晴らしい。

ラスト異物を飲み込む、というシーンが前向きなものになっているのにも震えた。
本当に素晴らしかった!
新たな人生を歩み出したハンターに幸あれ。応援しています。

追記
スコア5の付け方が分からなくなってきている笑
今作4.8くらいなんだけど笑

ストーリー : ★★★★★
映像 : ★★★★★
設定 : ★★★★☆
キャスト: ★★★★★
メッセージ性 : ★★★★☆
感情移入・共感 : ★★★☆☆

cc/“欲望”をのみこんでゆく──。
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