ヒムロ

Swallow/スワロウのヒムロのレビュー・感想・評価

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
4.6
ニューヨークの郊外に住む新婚の妻ハンターは孤独を感じていた。
夫は大企業の御曹司にして常務取締役。
豪邸に住み、妊娠も発覚したがますます孤独感は増す一方。
そんなある日、義父母同席の会食でストレスを感じたハンターは光を反射する氷に魅了され、手掴みで飲み物から氷を食べてしまう。
未知の喜びを知ったハンターは自身の宝箱に入っていたビー玉を見つめると再び飲み込む。
「飲み込む」という異常なストレス発散に魅了されてしまったハンターは瞬く間にエスカレートしていく…。


まず最初に言っておくと僕はめちゃくちゃこの映画が面白かった。
同時に、見るのがしんどすぎて何度休憩を取ったか分からない。
絶対苦手だけど面白そうだしと思って見てみたがあまりにもしんどかった。
直接的なグロ要素は薄いがSAWとかでちょっとキツイなと思う僕が無理と思うぐらいキツかった。
直接的なグロは手術シーンぐらいであとは吐血などだが、やっぱり飲み込むシーンは辛すぎる。
HSPやエンパスの人は絶対に見ない方がいい。
他にも感受性が豊かだったりする人は本当にしんどいかも。


ともかくあまりにも映像がエグいのだが、何でそんなことするのと否定しきれないのが良い脚本だと思った。

夫の話半分な態度はまだしも、義父の話を切る態度や義母の無許可侵入からの息子の好みに合わせて髪伸ばしたら?発言は反吐が出るほどキモくて共感する観客もいたのではないだろうか。

最初はそんなリッチーやその両親の態度がストレスになって自傷行為や不貞行為の代わりとして異食を行っているのかと思ったが、完璧な妻として振る舞うことが求められるハンターにとって「異食をする」ということが家の力を使わずに自分で成し遂げれる行為として達成感を得てしまっている、という風に見えてからは世界が変わった。
女性らしくあれという古い考えの家からの脱却の手段、自立した自己実現のための表現方法に異食という異常な手段が入ってきてしまったが故にハマってしまったのではないかと思う。

そして恍惚とした達成感の中で感じる「後継ぎを孕んでいる完璧な妻」という周りの幻想を破壊していく自傷行為的な罪も含んだ喜び。
負のスパイラルが生まれる必然性を感じる。


ラストシーンで再出発を果たしたハンターが去ってから、エンドロールのバックでトイレに出入りする女性たちの姿が流れる。
人種や体型も様々な女性が映される一方で、鏡で自分をチェックする彼女達の姿を見せるのは強いメッセージ性を感じた。
自分にとって美しい自分であれということか、はたまた女性は等しく美しくあることが求められているという事へのアンチテーゼか。
しっかりとEDを噛み締めてもらいたい。


しかしテーマやメッセージは女性に是非見てほしい映画だが、やっぱりエグすぎるのでオススメもしずらいのが難点か。
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