若色

Swallow/スワロウの若色のレビュー・感想・評価

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
3.8
観た直後、胃がグルグルしている。

シンデレラストーリーのように、お金持ちのハンサムと結婚した妻は、それこそ城…いや、要塞のような山奥の豪邸を掃除しながら、1人旦那の帰りを待つ。
物語の2/3はこの要塞で撮影されるサスペンス映画。こんなところに1人妻を住まわせる旦那とまともではなく、マザコンのモラハラ君。モラハラ君は、自覚がないから厄介で、デリカシーのない行動を重ねる。
ストレスが溜まる主人公が選んだのは、Swallow-飲み込む-ことだ。
異物食と呼ばれるこの症状は妊娠中の女性に多い病気のようだが、氷、ビー玉で始まった異物も、やがて画鋲や釘など人体を脅かすものを口にする。
それは全て主人公が発散できないストレス、悲しみを内に沈める手段なのだが、主人公の周りにいるのはダメなお金持ちの典型で、自分達のことしか考えてないポンコツ。ついに生死を彷徨うほどの異物を口にしてしまう。
この映画で印象的なのは鏡の使い方だ。やたらでてくる鏡は彼女の自信のなさを表す。旦那のネクタイにアイロンをかけてしまったことで「失敗したくないの…」と信頼関係を築けていない会話でもわかるよあうに、主人公は妻の立場でいられる時間をあと1日…あと1日…と延命している患者のようだ。
延命を少しでも延ばすよう、主人公は常に大豪邸をピカピカに磨き上げ、身体のラインに沿ったワンピースを着用し、屋内でもヒールのサンダルを履く。そのなんとも地に足のついていない居心地の悪い自分を鏡で何度も確認しては、内巻きにしたボブヘアのカール具合を触って確認する「まだ生き延びられる、、」と。
物語の起承転結の「転」の時点から鏡はエンディングを除いて出てこず、主人公の服装もどんどんラフに変わっていく。ずっと避けてた自身の出生に係るアクシデントと対峙し、大きな決断後、リュックにスニーカーで髪を1つにひっつめた表情で見つめる鏡に映る主人公は、不安そうだが顔色のよさ、笑ってはいないのに心のケジメが伝わってくる、名演技だ。
きっと主人公の行く末は前途多難であろう。しかし、彼女のストーリーはここから始まるとも言える。
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