『ワンハリ』を観たときの─そうシャロン・テート役のマーゴット・ロビーが映画館に行き実際のシャロン・テートがスクリーンに映るのを笑顔で鑑賞するシーン─多幸感を覚えているだろうか?
本作は現在のアンナ・カリーナが過去のアンナ・カリーナのスクリーンを通して回顧する、フィクションではないドキュメンタリーだ。
ただ、その多幸感のメカニズムはまったくもって同じだ。私たちが住んでいる今の世界に過去のシャロン・テートとアンナ・カリーナはいないからだ、ただひとつ救いがあるとすれば2019年までアンナ・カリーナは生きていたという紛れもない事実だ。
ヌーヴェル・ヴァーグは過ぎ去った一過性の青春ではない、キャメラを通したことで永遠性を獲得した青春なんだ。
だからこそ、僕みたいな若者はどうしたってヌーヴェル・ヴァーグのことを書き出すとこんな感傷的で見るに耐えない文章を書いてしまうんだ。