春イコ

スカイ・クロラ The Sky Crawlersの春イコのレビュー・感想・評価

5.0
なにが大人なのか?
歳を重ねても、
どうしたら大人になれるのかわからない子供のような僕らと、思春期のまま歳をとらないキルドレという存在が重なる。

僕らは社会に出て働き、きっとどこかにいるであろう、歯向かうことのできない圧倒的な力を持つ存在の大人や親、社会に対抗したり、新しい価値観を通さねばならない時が来るかもしれない。

キルドレはゲームとして戦争をし、その戦場で絶対的な力を持つ「ティーチャー」を恐れ、主人公はそれに立ち向かおうとする。

どちらも変わる決心をしなければ、繰り返されるような同じ日々を生きているように感じ、何のために生きているのかわからない。

「むしろ死んだほうがマシなんじゃないか?」
という考えが冷静によぎったりもする。

でも、何かが変わるまで生き続けろというメッセージは残酷でもあるし、希望でもあると思い続けるしかない。

ティーチャーに向かっていった主人公も、必死に生き抜いた姿の一つだったのかもしれない。

主人公が立派だったかはわからないが、
「死と隣り合わせの状況にあえて自分を持っていくことで、生きる実感を得ようとした」
のかもしれない。

すると、昨今国内で起きた、大学生がイスラム国への戦闘に参加する意思を表明したことは、今を生きる若者の気持ちが主人公と同じものを表しているだろうか?

鑑賞したのは数年前のことですが、この事件を振り返ると複雑な思いが巡りました。

映像はとても淡白ですが、空の色は美しく、CGによる戦闘機の戦闘はスピード感があり、空の上は非現実感が漂うような雰囲気を感じました。

押井さんらしい哲学的な台詞が満載ですが、ストーリーを追う分には邪魔にならず、効果的に添えられていて、とても洗練されていたように思います。

現代の日本で生きる私達に何かを示してくれたような、
素晴らしい映画でした。
春イコ

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