このレビューはネタバレを含みます
新感線の主人公の決め台詞とキメ顔はいつ何時も格好良い。
古田さんの「あばよ！」の一言で、青空に燃える紅葉の垂れ幕、タイトル看板がドドンッ⭐︎と輝いて興奮した。
このどでかいタイトル看板のファンだし、この瞬間を見るたびにキラキラした信頼と安心を劇団☆新感線に感じる。
この作品は大まかに太宰治の『走れメロス』黒澤の『隠し砦の三悪人』をテーマにしてるらしいけど七人の侍、用心棒、椿三十郎の要素もある気が。
テーマソングも時代劇っぽい骨太さで格好良く、黒澤映画を彷彿とさせる。
舞台観てる時には何も思わなかったのでゲキシネでゆっくり観れて良かった。
・七人の侍…農民に十兵衛が「お前たちも野武士から武具奪ってんだろ」
・用心棒…敵の懐に入り二転三転する騙し合い
・椿三十郎…目良の殿が味方の兵に白か黒の札を貼りたいという言葉（こじつけ）
成志さんの一人芝居がめちゃめちゃ面白くて、彼が喋るとその場の空気ごと全部持っていってしまう。喋り出したらもう成志さんの独断場。
古田さんと成志さんは演技が自然すぎてどこまでがアドリブなのか分からない。
ラストの古田さんと早乙女さんの殺陣が痺れる。
早乙女さんの殺陣がとても美しく速く圧巻で思わず口をポカンとあけて魅入ってた。
正直な話、初めて舞台で観劇した時のラストの感想は最低最悪だった。
事の顛末を、尺長めに写真と字幕だけで片付けてしまうのはがっかりしたし、最後のお城で和んでるシーンはなんだか虚無だった。
でも、今回は舞台で観た時よりかは物足りなさはあまり感じず爽やかなラストだとも思えた。
古田さん率いる四人組が大好きだしハッピーエンドで良かった。
…がしかし、この四人が目良家の莉左衛門を一瞬も顧みなかったことがとても後味が悪く、不信感が芽生えてしまった。
今日はナウシカと二本立てで観たばっかりに憤りが倍で湧いている気がする。
世は非情である、と言われれば致し方ないけど、それなら十兵衛の子分三人が死んだふりして生きてました！は甘過ぎないか。
全員地獄の釜、なら深みがあるけど莉左衛門だけこの扱いだと良い意味でも悪い意味でも浮いた存在。その不条理さに語れる良さもカタルシスもない。
誰にも救いの手が差し伸べられるわけじゃないと分かりつつも、四人が幸せそうにワッハッハと笑ってる姿を純粋に喜べない。なんだか心が重くなる。
これを脚本家は狙っているのだろうか。でもそういう受け取り方をしてほしいような感じもしない。
ただ、古田さんとの殺陣で血濡れになった莉左衛門がすごく良かった。不幸によって彼の見せ場が作られる天国と地獄。
莉左衛門視点だと、黒澤の『悪い奴ほどよく眠る』よりも個人的には遥かに後味が悪い〜…
何故なら彼には互いに信じられる人がいなかったから。長雨はいたが、彼は何故彼女が手助けしてくれるのか分からぬまま。
自分は元主君の妾の子だったのかもしれないという疑念を抱いたまま一人生きていく地獄。
残念だけど、この脚本家の方のツボと私のツボが合わないので乱鶯もそうなんだろう。
・OPがお洒落でびっくりした。煙もセンスしか感じない。
・とにかくささ姫がかわいい。カテコのお辞儀も一人姫仕様でときめく。
・舞台で「だってばよ！」とナルト走りしたのは古田さんだった記憶があるけど、ゲキシネでは成志さんがしていた。
・古田さんの須賀くんへの「この子役上がりが！」のいじりが一回のみだった。
・一幕の終わりに成志さんが指ハートしてた！エンドクレジット後のコメントでも覚えたてなのか自信満々に見せてくれる指ハート。かわいい。
・こんな時期だからこそ、最後の「ご来場ありがとうございました！」の字幕に胸を打つ。
最初と最後に古田さん、成志さん、いのうえさんのコメントがあるお得感。古田さんが「楽しかったですか？」と質問して「それは残念です！」と1人C&Rしてたのがかわいかった。
・カテコの須賀くんと早乙女さんがちょっかい掛け合っててかわいい。早乙女さんがこんなにこにこしてるカテコは須賀くんあってこそ。
・長雨さんが美しい。ピンク一色のアイシャドウを目蓋いっぱいに塗っても、むしろ映えて美しいのは長雨さんだけ。
・目良家の各々の戦闘服の配色センスが良い。それもキラキラしている。
・ミュージカルシーンが全部良い！あんな楽しい夏の法要だったら参加したいし、ビュービューシャララは最高だった。全員上手い具合に登場して奥方と長雨がWinkしたり、莉左衛門が全力で歌って踊り、ささ姫の愛らしさが爆発、十兵衛が良い声で酒瓶で歌い上げる。須賀くんが椅子取りゲームに負けるも定位置を見つけドヤ。成志さんの指ハート。ずっと観ていたかった楽しいシーンだった。ここで一幕が終わるのが最高すぎて、二幕への期待が高まる素晴らしい切り方。
編集、カメラアングルに何のストレスもなく集中できた素晴らしい出来でした。良いところだけを見せてくれた感じがする。ゲキシネにして頂けて本当に感謝です。
偽義経のゲキシネも楽しみにしてます〜！
そしてまた、楽しい舞台を観に行くことができますように！
