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滑走路のchiのレビュー・感想・評価

滑走路(2020年製作の映画)
4.0
真摯に作られた良作。見終わって自分自身や周囲の人、学生時代のクラスメイトなどに思いを馳せる。この問題だらけの世界を共に生きる人たちを。

私は世界は美しいと思って生きている。映画とは関係のない話だが、数年前に那須に旅行に行って藤城清治美術館に行った時に、藤城清治の「メルヘンの世界は愛らしく美しい。でも僕は現実の世界はもっと愛らしく美しいと思っている」というコメントを読んで、私もそう思うと感動したのをよく覚えている。
でも、実際は美しいことばかりじゃなくて、現実としていじめもあるし非正規雇用の問題もあるし、様々な理由で中絶手術も行われているし、戦争も起きている。本当はこの世界は美しいことばかりじゃないということは私もわかっている。
だからこそ、美しくないことがたくさんある世界だからこそ、同じこの世界を生きる周りの人たちに優しくできたらいいと思う。お互いにこの世界を生きる支えになれたらいいと思う。
学生時代の翠と須和の関係が良かった。

自殺した須和の母親が鷹野に語る言葉が素晴らしかった。鷹野が過去を真剣に後悔し心からの謝罪をしたからこそ出た言葉だろう。でもその一方で、いじめをした側は苛めたことすら忘れてのうのうと生きていたりすることもあって。いじめを受けた人が一生背負う痛みをいじめた側も一生背負っていかなければいけないはずだ。学生時代の軽い気持ちでいじめたのかもしれないが、いじめは一生の問題だということをしっかり子供たちに教えなければならない。

エンドロールに流れる主題歌が良いなぁと思ったら今回もSano Ibuki氏。hisの主題歌マリアロードも良かったが、今回の紙飛行機も良い。聴く。
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