えな

滑走路のえなのネタバレレビュー・内容・結末

滑走路(2020年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

気になってはいたけどなかなか手を出せなかったものを思い立って観た。

『きみのため用意されたる滑走路きみは翼を手にすればいい』
初めてこの短歌を知った時、この歌が希望のようにも、自分にはもうその滑走路に手が届かないような絶望のようにも思えた。
映画も同じように、受け取る側によってどちらとも感じ取れる話だったなぁ 。

綺麗事だけじゃなく、ただ前を向くだけじゃない、ずーっと静かな雰囲気でずーっと暗い
自分があまりにもしんどい時に見るにはしんどすぎるかもしれない。

ただ、悲しいことも多いんだけど、心が優しい人も多くて、誰かが辛いときにかけてあげる言葉は、自分が辛いときにかけて欲しかった言葉なんじゃないかなと思った。

あとは時間の経過と、それぞれのストーリーが交差していく描き方がほんとにうまくて、私は好きでした。

「自死」が物語に出てくる時、その人が本当に死んだ理由って誰にも分からなくて、考えても仕方ないと思ってしまうんだけど、残された人が前に進むためにはいくら勝手だろうと考えなきゃいけないんだなとも思った。
みんな別々の苦悩を抱えてるから、どの人目線の話でも気持ちが分かるというか、誰かが悪というわけではなくて。
いじめを止めなかった後悔もあれば、逆にいじめを止めたのがありがた迷惑だったとか、人間ってほんとにままならないなって。

この映画ってオチがついてるものじゃなくて、所謂こちらに考えさせる系の映画なんだと思うんだけど、 困っている人や苦しんでいる人を助ける側の人がいるとして、じゃあ助けた側の人たちを救ってあげられるのは誰なんだろうなぁっていうことはずっと考えてしまった。

あと、いじめの加害者が必要以上に描かれなくて、成敗されることもなく、ただ話に出てこなくなるのが、「いじめた側はいじめたことを忘れる」ということを表してるようで、逆にリアルだったな。

ここからただのメモ
ゆうとが泣きながらしゅんすけを殴るとことか、
しゅんすけのお母さんが「忘れてって言ってあげられなくてごめんね」って言うとことか、どうしようもなく泣けてしまった

人が自死を選ぶとき、それは絶望だったんだろうか
それとも希望のためだったんだろうか
きっと一生わからないんだろうな
えな

えな