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護られなかった者たちへのkaitomoのレビュー・感想・評価

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)
3.7
震災が残した傷痕×生活保護制度の闇×連続殺人事件。ひたすら重くてシリアス。サスペンス・ミステリーとしては弱く、メッセージ重視の人間ドラマと捉えた。
震災を扱っていながら、配慮のためか、予算のせいか、直接的な描写はないし、町の様子もほぼ映らない。彼らがリアルタイムでどのような状況なのかダイレクトに分からせるような映像描写があったら、もうちょっと響いた気がする。
殺し方は結構酷いんだが、犯行自体の描写は控えめ。縛り方が凄くてそこだけ笑いそうだったが。
全体的に地味な作品だが、演者の迫力は充分。最近引っ張りだこの清原果耶は、最近凄みを増してきていて、本作でも表情が絶品。佐藤健は割といつも同じ印象だったが本作での鋭い目付きは明らかにいつもと違った。瑛太はよく似ている別人かと思うぐらいイメージと離れた役柄で、大きなインパクトを残した。
阿部寛は滑舌が悪化している気がする。林遣都の喋り方は無駄に不快。彼はもっと愛嬌のあるキャラクターで和ませてくれるポジションのが良かったのでは。
本作で描かれているのは誰が悪いとも言いがたい、まさに震災が生んだ副次的悲劇。犯人はもう心が壊れてしまっていて正常な判断ができなくなっていたということで一応納得できる。被害者に非はないとまでは言えないが、罰としては重すぎる。というか、被害者がああいった行動をした理由をもっと深掘りしてほしかった。これを人災みたいに扱ってしまうと問題提起としては手落ち。
どう考えても極めて精神的にしんどい仕事をしている職員に責任ばっかり乗っけるのは違うのでは。
あとラスト、無理やり繋げた感で興ざめ。匂わすぐらいで良かったのでは。
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