中山七里の原作既読。
東日本大震災の起きた仙台市を舞台に、生活保護関係者の連続殺人事件の真相とその背景に潜む社会問題を描く。
生活保護制度を問う本作。難しく深いテーマ設定。
「申請主義」「必要最小限」という名のもと、受給資格があるにも関わらず、生活保護制度から排除される人たち。一方で、虚偽申告などによる不正受給があるのも事実。
この両者のバランスが難しい。その間隙を見事に突いた内容だと思う。
震災が残した爪痕も描かれている。それがまた重い。
地震は、人の命や建物だけでなく、「人と人の繋がり」や「笑顔」なども奪ったことに改めて気づかされる。それらを取り戻そうにも、生活保護制度、引いては行政だけでは自ずと限界があるのかも知れない。
親族や知人友人、行政にも頼れない、エアポケットにハマった人たち。タイトルの「護られなかった人たち」に繋がってくるのだろう。
殺人事件を追う刑事役を演じたのは阿部寛。『トリック』や『テルマエ・ロマエ』で見せたコミカルなキャラは封印。哀しい過去を持つ、陰ある人物を好演している。
また、事件の鍵を握る若者を演じたのは佐藤健。こちらも『るろうに剣心』とは違い、怒りの沸点が低くて不愛想な、尖った人物を熱演。
この両者の過去がサイドストーリーとして描かれる脚本にも唸らされる。
テーマ、ストーリー、キャスト、いずれも私好みの作品。社会派ドラマがお好きな方はぜひ。原作者や監督からの問いを一緒に考えて欲しい。
