まーさん

沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~のまーさんのレビュー・感想・評価

4.3
パッチアダムス的なやつだと思ったら全然違った。日本向けの予告やポスターなのだろうね、ハートフルな映画を想像して行ったら、まんまとやられた。つらかった。でもだからこそ、映画館で観る意味があるってもんだ。現実世界からは逃げられないのに、私は嫌なものを観ないように生きてる。だけどこんな映画との出会いがあるからこそ、過去を知り、未来に活かす、活かさなければならないと思わされた。映画の中の人たちのように一緒に笑い、一緒に泣き、一緒に恐れ、生き延びたような気持ち。正直、パントマイムが上手とは思わなかった(大舞台で何をやっているのかあんまり伝わってこなかった)けど、彼らのように戦争を生き抜いた大人たちが子どもたちを守り、未来に繋げる強い意志を持ったからこそ、私たちが今生きてる事実…。震えました。
それにしても、ナチの考え方は今の日本の一部の人の発言にもあってゾッとする。純粋な血とは何なのか?あるグループを絶滅させることを本気で善として行動する彼らの心が全く理解できず、でも彼らも芸術に触れているわけで、何を見て何を感じているのだろう、同じ人間のはずなのに…と改めて思った。やはり戦争は全く理解できない。
観てる途中に、戦争に繰り出される私たち市民が頑なに戦地に赴かなければ戦争は撲滅できるのでは…と思ったけど、あんなふうに拷問があると、目の前の親しい人たちと生き抜くためにやはり手を貸してしまうのだろうと思った。
デュシャンの話をしてるところで、あら、デュシャンってそんな昔の人だったんだと驚愕。あんな世界がひっくり返るような芸術が生まれても、戦争はなくならないのだなと思うと、過去も未来もずっと愚かなんだね人間は。どうしたら世界はもっと良くなるんだろう。諦めずに生きていきたい。だから映画は、芸術は、続かなければならない。
14歳のあの女の子がめちゃくちゃ素晴らしかった。彼女が映画を成立させていると言っても過言では無い。
まーさん

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