のこ

スーパーサイズ・ミー: ホーリーチキン !ののこのレビュー・感想・評価

4.5
前作がファストフードの健康面への被害を訴えた作品であるのに対し、今作では自らがFF店舗の運営に乗り出し、企業のマーケティング、米大手食肉加工企業による養鶏家の支配と搾取、養鶏の生産から消費までの実態についてを明るみにしている。より対象が大きくなり社会的意義が認められる内容になっているのではないだろうか。

彼自身が開店した店舗を見れば一目瞭然、その様は実に皮肉の効いた内容でありつつ、改めて現代における生産と消費の在り方について考えさせられる。
それと同時に、自分が監督であるモーガンを凄いと思うのは、観客である我々があまり不快感を感じずに見られるように編集されている点である。ポップで愉快に、そしてあくまで市場を牛耳る大企業が弱小養鶏家の支配している様や都合の悪い真実を隠蔽して商品を販売している点を強調しており、それに加担している我々消費者への追求はほとんどない。だから我々はさしたる罪悪感もなくこの映画を楽しむことが出来るわけだ。最後に彼の店舗でバツの悪い顔をする人もいるが、1週間もすれば何もかも忘れてまたFFのバーガーやチキンを口にするのだろう。

彼自身Twitterのbioに「Chicken Lover」と書くくらいなので、自らがあのような非人道的な養鶏を行うことは気に留めていないらしい。わざわざFFを経営し、鶏に同情しつつも、ヒナを放り投げ、死骸を足で蹴る行動から見て取れる。ちなみにホーリーチキンは現在NYCにも出店しているらしく、盛大なギャグかと思いきや本当に鶏肉の消費に加担しているのだから、その点は“個人的には”とても残念だ。

自分はあのように「殺されるために産まれてきた」何億もの鶏(や牛や豚)の映像に衝撃を受け、殺される時に彼らが鳴き叫ぶ姿やとある工場でオスのヒナがシュレッダーにかけられる映像を観て、お肉を食べるのをやめた。狭くて糞まみれで人間に踏まれて死ぬこと、自分の身体が支えきれずに脚を折ること、それを人間が食べるためには仕方がないからと静観することが果たして正しいのか。愛されて育った動物の瞳と家畜の彼らの瞳の輝きって全然違う。あまりにも違って恐ろしくなるくらい。

この映画を観た人がそこまで考えるとは思えないし、こんな考えに至って実際に行動する自分が少数派で異質に見られるのも重々承知している。だから別にモーガンがチキンラバーだろうが関係なく、「ナチュラル」「放し飼い」等の人道的アピールがいかに幻想かを詳らかにしてくれたこの映画に感謝したい。誰かのキッカケになればとひそかに願っている。
のこ

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