分厚い文庫本を一冊読み終えた感覚
いろんな感情が心に重たくのしかかる
ブギーナイツを経て完全に群像劇で開花したかんじあるね
アメリカンビューティもちょうど同じ時期に製作されているのがおもしろい
ジョンカサヴェテス的な構成の複雑さ、展開の作為的編集によって感情を制御される実験的な映画だった
濱口竜介ももろカサヴェテスに影響を受けててるから近い部分がある
▼ネタバレあり
愛とは
ヘイトとは
自分を偽ることとは
そして赦すこととは
境遇の似た者同士の別々の視点でドラマが描かれているのが深い
クイズ番組に出演している天才の子供vsかつて幼少期にクイズ番組に出演して天才と呼ばれていた過去の栄光にすがる男
かつて不倫をして妻を捨てた男と今は亡き妻の間に生まれた恋愛コントロールに執着する息子vsかつて不倫をした挙句娘をレイプした男とその妻の間に生まれた薬物依存に走る娘
それらに加えて様々な事情を抱えた人たちが密に介入してくる。
遺産目当てに老人と結婚した女
自分は正義を貫いていると信じて一般人を脅すバツイチの警察
母親の再婚相手を殺した男「ウジ虫」(父親)を警察側にチクった黒人の子供
その子供のラップが印象的。
「物陰でマスをかいてるお前。アホンダラ、ヤク中、ニガーのチンポ野郎。ひねくれて育ってポリになってスゴんでみせる?それでホシが自主する?ムダだよファッカー。ツッパリはよせ。おれは預言者。ウジ虫の話をしよう。踏み潰されるのがウジ虫の運命。悪魔に追われとっ捕まる。踏み留まって苦汁を飲め。神が癒しを与えてくれる。一件落着、めでたしだ」
このラップは、この映画に出てくる人たち全員に向けて語っていて、
「コンプレックスやトラウマ、後悔、罪悪感などを抱えたままウジウジして生きていると、いつか己の中の心の闇に囚われるぞ。多少は嫌なことでも努力して解決しようと試みればなんとかなることもある」
ということだと思う。
ジミーとドニーが言っていた「過去を捨てても、過去は追ってくる」というセリフも同じく
ベルリン金熊賞とるのさすがだな