Sunny

ビルド・ア・ガールのSunnyのレビュー・感想・評価

ビルド・ア・ガール(2019年製作の映画)
4.7
予期せぬ双子の出産で産後うつの母、70年代から止まったままの夢への結果を待ち続ける父、真っ当な道を進む兄、そして、そんな家族の中で、貧乏や学校での疎外感ももろともせず、詩人を目指して明るくひた走る主人公。そんな彼女が兄の勧めでロックの批評ライターへ応募することから始まるストーリー。

音楽は感情の化身であり、言葉もまた感情の形であるが、生み出す者の人間性を表すものでもある。そんな、感情を介して繋がる音楽と言葉が出会った時、果たして誰の共感にも合致するものが生まれるだろうか。いや、それは絶対にないだろう。共感や熱狂を求めて書き出される音楽も言葉も、互いに破滅させるだけに過ぎない。それは、人間自身にとっても同じことだろう。自分自身に正直に心地よいと思えることに反して生きれば、いい関係を保てていた周りの環境を失いかねない。挙句の果てには本当の自分さえも。

変わりたいと願うことも、それを叶えようとすることも、素敵なことだ。
しかし、心に正直な自分がベースにあることが前提だ。

大人になると社会の中でしたくないことを強いられることが増え、自分がわからなくなる人もいる。劇中の楽曲に響くベース音が心臓と呼応し、美しいメロディーに乗せた歌声が血流とともに体を駆け巡る。そうして体全体で刺激を受けながら、忘れてきた大切なことを、大人こそ、この作品から学ぶべきだと思った。
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