けーはち

カポネのけーはちのレビュー・感想・評価

カポネ(2020年製作の映画)
3.1
『マッドマックス怒りのデスロード』の無口なマックスで出世、『レジェンド狂気の美学』1人2役双子マフィアなど変わり種アウトロー演技派路線を征くトム・ハーディが惨めな晩年のアル・カポネを怪演。梅毒が悪化し認知症と脳卒中に進行、48歳にして要介護の彼に「暗黒街の顔役」の姿はなく、人々を辛うじて繋ぎ止める金と家族の絆も尽きていく。彼に隠し財産があると踏んだ家族やFBIの捜査官が探りを入れても意味は成さず……愛する者も認識出来ず誰も信じられず、その破綻していく様子は悲惨そのもの。

序盤からチラチラと実在しないカポネの隠し子の存在が示唆されてくるので、「ははあ、これは認知症のカポネを題材に父子の和解を描く『ファーザー』的な映画か」と思いきや、進行につれ映画自体も破綻。隠し子の存在にしても特に意味も成さず、もうテーマとかストーリーとかそんなの関係ねえ、と壊れる主人公と、一家の終焉に向かう様子を描くだけ。

監督は『クロニクル』で名を上げ、ディズニーによる20世紀FOXの買収時のゴタゴタもあり『ファンタスティック・フォー』のリブートで大コケしたジョシュ・トランク。過去の栄華を妄想で反芻しながら利益目当てのゴマすり野郎どもにキレ散らかし誰とも意思疎通もできず何も残せず壊れてしまった往時のカリスマを自身に重ねたのか。周囲のクソ野郎に向けてトミーガンを乱射したかったのは監督自身だったのか……?

お前まだ若いじゃん、諦めんなよ、まだやれるよ、と監督を励ましたくなる一作。