YokoGoto

喜びも悲しみも幾歳月のYokoGotoのレビュー・感想・評価

喜びも悲しみも幾歳月(1957年製作の映画)
3.0
加瀬亮さん主演の映画「はじまりのみち」を見た時に、木下恵介監督ってどんな作品を作ったんだろう?と興味を持ったが、一度も見たことがなかった。たまたまWOWOWでやってたので、試しに録画鑑賞。
19657年の作品。灯台守として日本を転々とする夫婦の25年を描いた作品。

2時間30分の長い映画だが、ひたすら夫婦の生活と、その周りの人々の人生を細やかに描いた作品だった。
古い映画なので、若干の苦手意識があったのだが、映画全体としては、とても構図が考えられていて、レトロなポストカードにしたくなるようなカットが沢山あった。

何よりも、灯台フェチの私にとっては、白亜の洋式灯台を含めたシーンは個人的にツボ。
主演女優の姿は着物にかっぽう着なのに、そのヨーロッパ調の雰囲気は、なんだかイタリアの島で撮影されたもののようにも見える。あの頃の日本の海も、普通にキレイで南国のようだ。(笑)



全体を通して、シナリオもそうだし、シーンシーンのカットもそうだが、「余計なものが一切ない」、という印象を感じる。
余計な演出もないし、余計な情景表現もない。
人々のやりとりにも、余計なものがなく、シンプルな奥ゆかしさがある。
ただただ、他人の心を気遣ったり、夫婦自体がお互いを純粋に気遣っている。

メール一本で遠くの人と連絡を取り合えるように、色んなものが便利で楽になった現代と異なり、この時代は色んなものが不便で面倒くさい。だからこそ、この不便さと大変さが、人々の心の交流を温かく、そして大切にしている情景が、映像表現として伝わってくるようだ。




主演女優や主演男優もそうだ。
初々しい新婚の夫婦から、初老を迎える25年後の夫婦の姿は、とても自然だった。
俳優さんの経年変化の再現が、とても素晴らしいと思った。

今のメジャー映画の俳優さんにない、自然な演技と自然なふるまい。演技しているというより、役として溶け込んでいる感じがする。個人的に、大げさな芝居のメジャー映画よりも、よりナチュラルな演技をするインディーズ映画の方が、良作が眠っている現代の邦画界を考えると、昔はこんなに良かったんだな、、、、と残念な気持ちになる。
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