エヌシマゴリラくん

ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれからのエヌシマゴリラくんのレビュー・感想・評価

3.0
評価:いいよ、これ。
ただ、「シラノ」と「出口なし」を合作しているのが丸見えで…わざと?

シンプルにいいよ、これ。
キャラクターがそれぞれ魅力的。

ただ、どうしても過去の名作からの引用が多くて、それらを現代に落とし込んだためにパロディー感があるのが否めない。
「それはあなたのオリジナルの言葉なの?」みたいのが本編で出てくるからこそ、オリジナリティの欠如が残念。

特にベースになってるのが「シラノ・ド・ベルジュラック」で、ラブレターの代筆するストーリーの域を超えておらず、原作のサプライズを超すことはなかったかな。
これについては今回映画化された「シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい(原題:Edmond)」に詳しいので是非ご覧いただきたい。

その戯曲「シラノ~」に、戯曲「出口なし」の男一人と女二人(そのうち一人が王様に気に入られ妃になる捕虜民のきれいな女性、もうひとりはレズビアン)という設定をそのまま加筆して現代化しただけのように私には見えてしまったので、それで興ざめしたところがあるんだと思う。

そのほかいろいろ往年の名作たちが、アイテムとして登場する。
とくにチャップリンの『街の灯』については堂々と提示してきちゃいます。潔い!
協会がカトリックの中でもイエズス会の協会なのはなんか意味があるのかしら?おしえて偉い人。

あと、だれも触れていないんだけど、吹奏楽部が映るシーンで「チューバは・・・」って先生が指示を出すにも関わらず、一回もチューバらしき楽器が映し出されないのは、同じくチューバがいないのにチューバが指示されるという完全ミスシーンのあるイタリア映画『海の上のピアニスト』を引用してるんでしょうか?細かすぎるし、ストーリーに関係ないから絶対違うけど。
(音楽をするものとしては、ピアノの壊しちゃうとことかストーリー上でただの道具になっちゃっててもうちょっと大事に扱ってほしかったな、とひとこと苦言を呈します)

監督が、「自分が変化をしたことで見える世界が変わっていく。ひとつのことが終わることは始まりにつながり、それが希望なのだ」ということを語っていて、まさしくエンディング後の人生こそ「面白いのは、これから」なのだろう。