れーちゃん

TITANE/チタンのれーちゃんのレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
3.0
幼い頃、父の運転する車で父の気を引こうとしたところ、車がクラッシュしてしまい頭にチタン製の金具を入れることになった少女、アレクシア。
大人になったアレクシアは車に対しての愛が止まらずモーターショーのダンサーとして頭に大きな傷跡を残したまま生きてきた。

ある日しつこいファンに付け回され、車の窓ガラスから侵入してきた男をチタン製の髪飾りで殺害してしまう。後始末をしていると何かに呼ばれるかのようにアレクシアの足は車へと向かい、そのまま車と行為を交わしてしまう。

車と行為を交わした後、しばらくして腹痛や吐き気に襲われたアレクシアはまさかと思い検査をすると妊娠していたのだった。
車との子なのか?なんなのか?そうこう悩むうちにお腹はどんどん膨れ上がっていく。

自暴自棄になり荒れ狂ったアレクシアは街から逃げ出しひたすら遠いところへ向かおうとする。
そんな時に見かけた「尋ね人」のポスターに写っていた少年。アレクシアはその少年にになりきり、消防士である父親・ヴィンセントの元で暮らすことになる。。

このヴィンセントとアレクシア、2人の人物が歩んできた全く別の人生の中に共通する箇所が多々あった。

チタンの入ったアレクシアがチタン製のものばかり目が行ってしまうことや、ヴィンセントが毎晩尻に打ち込んでいたステロイド剤で自分の若さを保とうと必死になる姿など「異物」への恐怖と執着による依存性を表していた。

次に愛に飢えた心の痛みだ。
アレクシアは父に構ってもらいたいが故にとった行動で事故を起こしてしまい、さらに父との確執を生んでしまった。ヴィンセントは息子が行方不明になり、妻は出て行ってしまい、とにかく孤独な人生を歩んできた。身近な家族の愛に飢えていた2人。
これらのことが互いを強く引きつけ、傷を埋めあい、依存しあっていったように感じた。

そして最大のテーマは女性の苦しみや痛みにあるとみた。
アレクシアがヴィンセントの元を離れようとバスに乗り込むが、レイプ魔のような男たちが隣の席の黒人女性を今にも犯しそうな発言をするなど挑発していたため、その女性は男性の格好をし女性としての身を隠していたアレクシアに助けを求める。
しかし、アレクシアは女性だ。見た目を変えようと女性でしかも妊娠している。アレクシアにとっても不快で怖い時間だったに違いない。
ヴィンセントの元妻のものであるワンピースを着てみたり、バスの上でセクシーなダンスを踊ってみたり。
女性が抑圧された世界への抵抗を表現しているように感じた。

ただ、とにかく痛くてグロテスクで、動機が不明なことも多々あって終始疲れてしまった。
作品の撮り方、演出は細かくとても素晴らしいと思ったが、ストーリーも少し荒かったのでもう少しアレクシアの心の内を細かく描いてもよかったのではないかな?と思ったりした。
れーちゃん

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