半兵衛

歪んだ関係の半兵衛のレビュー・感想・評価

歪んだ関係(1965年製作の映画)
3.2
妻を殺された医師が、彼女と不和だったことから警察に殺人容疑で取り調べられるが、医師と不倫関係にあった看護婦がアリバイを証明したことから事件の捜査は振り出しに戻る…。ベットシーンやお色気シーンもおとなしく(乳首すら出てこない)、その内容も相まって前半はまるで二時間ドラマを見ているような感覚だが、若松孝二監督の淀み無いスムーズな演出によって飽きずに見れる。

見所は後半のパートで、当初主人公と思われていた医師はあっさり退場し、真犯人の方にスポットがあてられる。真犯人はネタバレになるのであえて誰とは言わないが、その人物が初めて出てくるとき脚をひきずって歩くのをさりげなく見せ違和感をほのかに与え、そして徐々に真犯人の目的がわかるにつれてひきずっている脚にカメラを向けることでノワールっぽい雰囲気を醸し出している(若松監督によると、犯人役の人が実際に足を悪くしていたことから思い付いたらしい)。ただ肝心のトリックが『ピンク・フラミンゴ』っぽいのには苦笑するけど。また事件に巻き込んだ第三者で締めるオチが絶妙。

それからこの作品では60年代の風景がいくつか映像に残されているのも貴重。つげ忠男や水木しげるの作品に出てくる「血液銀行」(映像で残っているのはこの作品だけかも)、そして貧民が住む公園のあばら家(立ち入り禁止の新宿の公園に侵入して撮影した)など。そういう古い時代の風俗が楽しめるし、なにより新高恵子と城山路子という二大ピンク女優の現役時代を見れるのが眼福。
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