単なるヤクザものの映画だと思って見るとびっくりするかも知れない。
これはケンジというとても優しい男がただひたすらに「家族」との幸せを求めただけの話だ。
彼はきっとユカとムスメだけでなくヤクザの仲間も、愛子やつばささえ家族だと思っていたんだろう。その家族の幸せのために手を汚したにもかかわらず、最後に一番邪魔な存在が自分だと気づいてしまう。そのときの彼の絶望感を想うと涙せずにはいられない。
すべてのキャストがピタリとハマる、素晴らしい映画だった。綾野剛だからできた絶妙な表情、舘ひろしだから出たあのリアルな威圧感、尾野真知子だから出せたあの切実さ、どれもかけてはならないものだった。ヤクザ映画にこんなに泣かされたことはない。