『あのこは貴族』は原作小説も既読。結婚をめぐるアラサー女性の心情を、都会と田舎の対比をしながら、テンポ良くかつ詳しく書いてくれた小説で、興味深く読みました。
この映画版は、心情や状況が文字で詳しく書かれていた小説に比べ、映像として雰囲気で見せる感じなっていました。
冒頭、東京の夜を車で走る情景を見せる。その雰囲気に、東京が持つ独特の、孤独感や疎外感がすでに滲み出ていて、「あ、この映画のテイスト好きかも...」と最初に気にいっちゃいましたね。
このへんの空気感、僕の中では『ロスト・イン・トランスレーション』なんかと近い感じ。
自分自身、数年前まで合コンやらデートやらお見合いやら、いろいろを通して見てきた東京の女性像とそれを取り巻く環境。
それが、映像イメージとしてこの映画ではなんとなく投影されてて、なんか懐かしい気持ちにもなりました(笑)
東京って、賑やかなようだけど、特に夜は寂しくもあると思う。どんな階層に生きる人にも、他の階層が羨ましく見えたりして、そこで閉塞感を覚えたり。
本当の自由を得るのは簡単ではなくて、そこにもがいてる人の姿を、しっかり映像で捉えてくれていました。
あと、これは原作にもある要素ではあるけど、三角関係での女性のバトルといったトレンディな展開ではなく、むしろ「女性は一緒に戦うもの」ということを、セリフでも明確にしていたのが良かった。
この力強いアピールが印象的だったし、2021年に見るとより一層今っぽいなと。
また、役者さんでは門脇麦の箱入り娘が良かったですね。
親族ご挨拶のヒリヒリした中で見せた座布団マナー。あの細かな礼儀正しさに、ニヤリとしてしまいました。
