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あのこは貴族のEDDIEのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.4
観る前後でタイトルの捉え方が大きく変わる作品。
身分の違いにより“分断”されてしまう我々の出会い。どこか物足りなくて心許ない。
“あのこは貴族”だと羨むばかりでなく自らの足で道を切り開き他人を認めるとこから始めよう。心地よく優しい映画。

門脇麦演じる榛原華子。かなりいいところの出自で、彼女の家庭環境や裕福さ、家族の関係性がすべてわかるように演出された冒頭の正月の集まりのシーンが素晴らしかったですね。

人って敷かれたレールの上をそのまま進み続けるのか、そこに抗うのかって至上命題があるじゃないですか。
貧困時代を経て、経営者として大成功した人とかも中にはいるわけですけど、基本的には生まれた家庭環境で人生の大部分を決すると思うんです。
それが裕福な家庭であれば、仕草や振る舞い、日常で使うお店なんかも全部、中流階級の一般家庭の人には分かりえない特徴があるわけです。

だから「似た者同士」とか「類は友を呼ぶ」とかって言葉もある通り、基本的にはこれらの裕福と中流以下って普通に生活していたら交わらないんですよね。

で、本作は華子と水原希子演じる時岡美紀が対照的な出自をもって、5章構成で話が進行していくんですが、二人が邂逅してからは互いに“隣の芝生は青い”とばかりに気になる存在となるわけです。

某有名な私立大学慶應義塾大学でもエスカレーター式で進学してきた“内部生”と受験戦争で勝ち取った“外部生”との対比が出てきます。
まぁそこで内部生と外部生がどうやって交わっていくかってところも大事なんですけど、本作の良いところはどちらがいい悪いではないところなんです。

確かに作中、自分にはない何かを持った相手を羨む部分もありつつ、結果的に自ら地に足つけて道を切り拓く重要性が説かれていると感じたんです。

ネタバレになるので具体的には書きませんが、華子と美紀が初対面するシーンとか最高に良かったですもん。
そこで全体的にうまいパイプ役となったのが華子の親友の相良逸子を演じた石橋静河です。はい、私の推し女優の一人ですね。
いやぁ最高でした。彼女が助演として立ち居振る舞わないとこの作品は成立しなかったと言える存在感。

美紀の親友の平田里英を演じた山下リオも良かったですね。
主役二人はもちろんのこと、それぞれの親友役が素晴らしく物語に寄与してるんですよ。

キーパーソンの一人である青木幸一郎役の高良健吾も、華子を超える家柄の出自なんですが、自分以下の人間はやや下に見てる、けど別に悪気あるわけでもないし、確かに悪いやつでもないっていう絶妙なところを上手く演じていて、高良健吾ってやっぱ巧いなぁと。

キャラクターの魅力を語り出すと、まだ石橋静河だけでもっと書けそうなんですがネタバレ地雷を放ってしまいそうで怖いので、山中崇もとても良かったということで締めさせていただきます。

いやぁとても人と語りたくなる映画ですねぇ。好きです!

※2021年劇場鑑賞22本目
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