都麦

あのこは貴族の都麦のレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
5.0
【2回目(多分3回目)10/11パルシネマしんこうえん】
映画館で上映というものだから、はるばる神戸まで来て鑑賞
前回の鑑賞で「あ、今年の邦画一位はこれだな」と思ったけど、今回も改めてそれを実感した。本当に繊細に描かれていて、観るたびに、岨手由貴子監督を心の底からリスペクトする。

新たな発見で覚えてるものをいくつかメモ
・華子と幸太郎が婚約するとき、2人の間に暖炉の火がある❤️‍🔥のがいい画だなと思った
・写真撮影のシーンはやっぱり大事。表情と構成が真逆。
・華子をまるで写真撮影のように切り取るカットで始まり、終わる、そのギャップ
・BGMの印象付け方と最後の入れ方が完璧
・「人はどんな場所に生まれても、最高と思う瞬間も最悪と思う瞬間もある」これがこの映画の一つの主題なのかも
・美紀と友人の2ケツ=華子と友人の三輪車
・タクシー移動から社会を歩くシーン、カメラワークが印象的。ここは華子が作中で初めて徒歩移動していたシーンで、自分の足で歩み始めることの示唆だった。→後半、移動中華子は、今までのように車の後ろ席に乗せてもらわずに、えつこを乗せて車を運転している。
・華子の衣装はスカートからズボンに変わっていた。
・華子と美紀が初めて対面するシーン、背景が「東京」なのがすごく良い。すごく良い。

など

全体的に、一回目鑑賞した時よりも「日本の女性」をすごく強く感じた。涙が出た、何度も。

生きることが、この映画では描かれている。
本当に繊細で、美しい映画。
やっぱり2021年邦画1位は間違いなく本当にこれ。

【1回目5/24 出町座】
今日は久しぶりになんの予定もない休日だったので、午後はずっと出町座にいた。

そんな今日の2本目。予想以上に良かった!
期待の上を行かれたというのもあるし、本当に良かったのもあるし、ここ半年で1番の高得点。
2時間を超える作品なのに飽きることがなかったな。映画が好きなくせに映画を観ているとよく疲れてしまうんだけど、あっという間にラストシーンだった。

さて、ここからネタバレ含む

作品全体を通して、「東京」を本当によく描いていたと思う。綺麗に棲み分けされてる東京。綺麗な東京。汚い東京。気を抜けば独りぼっちになってしまう東京。

そんな東京に暮らす、まさに文字通り、生まれも育ちも真反対な2人が、「なんだかどこかが、ちょっと似ている」という話。たぶんそれは、無い物ねだりをする人間の性。

作品の中で2点、印象的なシーンがあった。

1つ目、記念写真
第一章(花子)元旦シーン、第二章(美紀)入学式シーン、それに加えて花子の結婚式と、「東京っぽい」ビルの上から写真を撮られる美紀。
この映画では「記念写真」を撮るシーンが多かった。そしてその状況が対照的だった。
美紀の写真を撮るのは友達で、レンズを除いてから「もっと笑って!」と。
それに比べて花子の写真を撮るのはカメラマン。結婚式のシーンで正していたのは花子の甥っ子の立ち位置、つまり構図だった。
一緒に写るものが、「家族」と「大学」、そして「両家」と「東京」。
まだ読み切れていないけど、2人の「世界」を写していたのかもしれないなあと思っている。

2つ目、花子が美紀の家に訪れた帰り道(だっけ?)道路を挟んで反対側の歩道に、「ニケツ」をしている女の子2人と花子は手を振り合う。
それはまず、間違いなく作中で「ニケツ」をしていた美紀と花子を表すものだったと思う。
そして、そのシーンをどう読むか、だけど
自分はその時、向かって右に進む花子と左に進む2人。そして、手は触り合っているものの反対車線にいることなどから、一度交わった2人の人生も、またそれぞれの階級に戻っていく描写なのかなと思っていた。

しかしラストシーン、花子は逸子のマネージャーとして働くことになる。車も運転している。生まれた階級、はたまた結婚当時の階級とは大違いの、庶民である。そして美紀は友人との起業に成功していっている模様だった。
つまりその、手を振り合うシーンは、向かって右に進む花子と左に進む2人(美紀)を相反していると読むのではなく、花子の先が下り坂だったこと、2人(美紀)の行先が上り坂だったことから、階級、つまり人生のフィールド、彼女たちの世界の変化の示唆と捉えるべきだったのかもしれない。
「貴族」と「庶民」のコントラストを際立たせる演出だったのかもしれないと思うと納得がいく。



同じ東京にある、違う世界と、似ても似つかない、けど似てる人生を、東京の夜景と一緒に描いていた。汚くて、綺麗だった。

門脇麦と水原希子、高良健吾。
配役が完璧だし、麦ちゃん演技うま過ぎた。
都麦

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