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あのこは貴族のすみのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.0
庶民が貴族に影響を与える話。
自分の意志を持って自分で決めて人生を生きてる人は輝いて見えるよね。

一見何不自由なさそうな貴族も貴族なりの悩みがあるんだな。
レールをなぞる人生は楽なように見えるけど、ある種大変で、大変なわりにその人のものではないのよね。
決して悪いことではないけれど、望むことや、考えること自体諦めてしまって自分というものがなくなってしまうのは寂しいことだ。
話の中で、田舎と貴族が似ているという発言があったけど、まさしくそうだなと思った。
外を知らない、絶対的な親の流れに逆らえない、もしくは自分の人生がそうあることを疑わない。意思がない、もしくは意志を持っても逆らえないから諦めてしまう。
家業や家柄というものは色濃くて、それを背負って生きる人は、どの階級にも一定数いる。
自由に生きることも、レールの上を生きることも、どちらもちゃんと大変で、どちらもその人の人生だ。

同じ貴族でも、華子は自分の人生を疑わない(疑いようもない)タイプで、幸一郎は疑うことを諦めてしまったタイプかな。
そして、幸一郎にとっての美紀は、ある種見下しつつも羨ましい存在で、本気にならないけど唯一肩の荷を降ろせる場所のような存在だったんじゃないかな。

貴族でも庶民でも、同じような価値観、生活、家柄の人どうしでつるむと、どうしても日常や常識がそうなってしまう。
なるべく違うバックグラウンドを持った人と出会って、視野を狭めないようにしたいものだな。
(華子は逸子ちゃんみたいな友人がいたら、もっと早く気づけそうなものだけど。)

門脇麦の、素直なんだけど流されて言われるままに育ってきたような、どこかぼうっとしてる演技が華子にぴったりだった。
仕事を探すときにまず義理の兄に頼むところとか、お雛様の展示とか、じわっと分かるような間接的な格差を表現しているところも印象的。

美紀との出会いで視野が変わって、華子はやっと「自分」を見つけようとしている。
世間知らずでお金持ちのお嬢さまが、身分違いの人と会うことで気づきを得る、、、というのはある種ベタな展開だけど、現代の物語として楽しんでみれました。
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