のびのびナード

あのこは貴族ののびのびナードのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.3
さまざまな格差がこの作品のなかでは描かれている。そのなかでも、階級格差の人間関係で悩み闘う女性たちが美しい。母になった途端、階級や家庭に雁字搦めになってしまった義母や同級生ママたち。そこに逆らって自由を手に入れるために格差の壁を乗り越えようと協力する主人公たち。非常に今らしい、人間らしい結末が爽やかな気持ちにさせた。橋の対面にいる女性たちに手を振る場面は今作のテーマを象徴するシーンだな~。
昨今、“有害な男性像”や”家父長制度“を取り扱う映画が非常に多い。僕が今まで観たそういったテーマを扱う映画の主人公たちは、いつも社会的や精神的、時には肉体的な暴力で解決していっていた。「男性には忠告に、女性にはエールになるかもだけど現実味ないな、現実問題なのに…」ファンタジー表現に振ったり、過激な暴力に振ったりしてどこか楽しているような、モヤモヤが心に残る作品が多かった。
しかし、こと今作に関しては違った。主人公の置かれている環境は現実味のないものかもしれない。ただ解決策に関してはこれ以上ない現実味を感じた。放置する。これでいいじゃん。そっと離れて放置する。緩やかな反抗。ここまで問題視されているなら、いずれ淘汰されていく価値観で間違いないはず。じゃあ、足掻かず、立ち向かわず、離れる。楽しているようで、1番真面目に向き合った映画だと思う。
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