Kachi

あのこは貴族のKachiのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.0
【男女で見方が変わる作品かもしれない…】

原作は未読。気になっていたがなかなか手が出せずにおり、Netflixのラインナップに加わったことを機に鑑賞。

大河ドラマ「麒麟がくる」で好演された門脇麦が、その時とは全く異なる「貴族」役を演じ、素人が見る限りでは完全な「貴族」であったことに好感が持てた。

慶應の内部事情は、ある程度知り合いがいるため聞き齧っているが、その中の男女のサンプルを取り出してみると、こんなドラマがあるのかもしれない…と思えるほどリアリティのある展開だった。

本作を「隣の芝は青い」とか「ないモノねだり」の話であると一蹴してしまうと、主題を取りこぼしてしまうかもしれない。

本作は、お金持ちと貧乏人、都会と田舎といった対比で見ると紋切型に思えるが、わたしにはそれは表面的な部分でしかないのだと思った。つまり、本作で描こうとしているのは、生まれがどうであれ、既定路線(よくレールと表現されるもの)に乗った人生か、道なき道をゆく「冒険路線」と仮に呼ぶ人生があるとすれば、その両者を対比的に表現していると考えると、2人の離婚の理由も合点がいく。

ただ、あくまでも自由意志バンザイというトーンではなく、どちらの生き方にも優劣はなく、本人の心の持ち方次第であるのだというメッセージが、最後の幸一郎を見つめる華子の眼差しから感じられた。

この見方はあくまでも、男性的かつ分析的な感想に過ぎないのかもしれない。実際に、結婚・出産に有形無形さまざまなプレッシャーを受ける女性からしたら、本作はもっと生々しく、目を背けたくもなるような手触り感がありそうだ。そういった意味で、これを観た女性に率直な感想を聴きたいと思った。
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