Kz氏

あのこは貴族のKz氏のレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.0
傑作と聞いていたけれど、あらすじを読むと1950年代の松竹映画みたいで、配信されても躊躇していた。のだけど、作者山内マリコへのインタビューを聞いて、キャピキャピしたフェミニズムに惹かれて、見た。

慶応の内部生と外部生の階級格差、5000円のアフタヌーンティーで普通にお茶するブルジョアジーと、キャバクラでバイトしても自力で学費が工面できずに中退するプロレタリアート、という構図化が面白い。
2016年の正月に、ホテルでの家族会食で、結婚つまり「家」の存続を責められる富裕層・華子と、2017年の正月に、富山に帰省してから、東京に養分として搾取されていることにあらためて気が付く貧困層・美紀、という対比が愉しい。
漱石鴎外と変わらず、家父長制・中央集権という明治以来の呪縛がにいまだ解けてはいないのだ。
二人が出会ってからの残り20分で、「個」の反撃が始まるのが爽快だ。

惹き付けられるのは、図式とともに静かながらテンポあるモンタージュ。タクシーから始まって見合までの30分で次々とシチューエーションを変えて、華子の婚約に至るまでの婿探しとともに、生活人となりが語られる。引き込まれて目が離せなくなる。
Kz氏

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