はなかすちゃん

あのこは貴族のはなかすちゃんのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.0
「私たちってさ〜東京の養分だよね」というパワーワードに唸ったよね。私も立派な東京の養分なので…
勉強ごりごりやって田舎から上京して大学に入学したら、ザ・裕福みたいな子たちがごろごろ居て、お盆と年末年始は駅前シャッター通りの県庁所在地からさらに車で1時間、周りは田んぼと畑ばっかりな田舎に帰って高校時代のジャージを着て、やることもないからとりあえず寝るみたいな私は水原希子見ててまじでこれ私じゃんと思ったし、そんな我々(希子と私とその他の東京の養分たち)とは根本的に違う、「格が違う家庭」ってあるんだと初めて思い知った大学での日々を昨日のことのように思い出した。

あの男が結婚する女と遊ぶ女を分けてるのもリアルすぎて。また自分語りしますけど合コンで出会って何度かデートした裕福なご家庭育ちの有名私立大ボーイ(バーニーズニューヨークにその人担当の店員さんがいて、お店に入るなり◯◯様、お取置きのお洋服こちらにございます〜とか話しかけられるようなタイプ、私なんてバーニーズニューヨークで店員に透明人間扱いされるというのに)が、好みのタイプに「育ちが良い人」と言っていて目から鱗だったのを思い出したよね、なんで田舎のスラム街出身の私とデートしてたんや…

ベランダで印象的な会話が行われるシーンがふたつあって、ひとつめは門脇麦が高良健吾に将来の夢について聞いたら今自分がこうしているのはただ家を正しく継ぎたいと思っているだけ、それは門脇麦が家柄のいい男と結婚することだけが幸せになるための正解と思っているのと同じ、というところ。「自分の幸せ」は自分で決めてるつもりでいたけど、その家に生まれた時点で敷かれているレールに疑いなく乗っていただけという現実を知る感じ。
私はまあまあ貧しい家庭で育ったので、松濤とか都心の一等地にでかい家があるような人には私が抱えてきた不安や悩みは一切無縁で、絶望するようなこともなく守られて生きてきたんだろうと思ってしまっていたけど、人それぞれ、三者三様の地獄があるんだなあと思うた。
次がタクシー乗ってるときに自転車を漕ぐ水原希子を見かけて思わず声をかけた(あそこで思わず声かけられるのが真っ直ぐ育ってきたお嬢様感ある。性悪説じゃなくて性善説感というか)あとに水原希子の家のベランダでのシーン。あの一人暮らしの家のリアルさよ…あんなもんなんだよなあ、働いてる独身女性の一人暮らしの家って。あれでもあの立地なら結構家賃高いんだろうなあとか。あのベランダでの水原希子の、どんな立場でも良い日もあれば最悪な日もあるけど、それを話せる人がいればとりあえずは満点的な言葉があまりに金言すぎて、どんな人生歩んできたらここまで達観できるんだ…?となった。私の田舎は基本見栄っぱりで底意地が悪くてうまくいってる人を妬んでボロカスに言うみたいな人たちが多い地獄の釜煮詰めたみたいな場所だったから、私はこうは思えなかったなあと思った。
「うちの田舎も親の人生トレースしてる人が多い」というのは首もげるほど頷いたよね…

女同士がとても大らかで、シスターフッドというのか、お互いをジャッジしたりしない暖かさがあったのが良いよね、争わせないという。
私にはあんな風に利害とか損得とか考えずに側にいる女友達っていなかったから、こんな女同士の関係もあるんだなあと。

なんか思うところありすぎてクソ長感想になっちゃったよね〜

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