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劇場版 BEM ~BECOME HUMAN~のEDDIEのレビュー・感想・評価

劇場版 BEM ~BECOME HUMAN~(2020年製作の映画)
3.7
“早く人間になりたい”
妖怪人間ベム・ベラ・ベロそれぞれの夢は叶えられたのか。
人間社会に溶け込んだベルム。
傍観者である我々はその異変にすぐ気づく。
悲哀に満ちた現実と彼らの夢を実現するクライマックスはとても悲しく、でも温かい。

1968年から地上波放送されたテレビアニメシリーズで、平成の時代には実写ドラマ化&映画化もされました。
私はこのオリジナルのアニメシリーズを地上波の再放送で観ていて、子供の頃の記憶ですが強烈に覚えています。
「早く人間になりたい」という純粋な思いで人間界に巣食うおぞましい怪物たちと戦う3人の妖怪人間たち。
だけど、醜いのは人間たちの心の方。子供ながらにこの悲哀に満ちたエピソードに心打たれていました。
妖怪人間ベム・ベラ・ベロらが変身した姿は気味が悪いものでしたが、人は見た目で判断してはいけないとこの頃に学んだのかもしれません。
当時はベロの友達になってあげたいなって気持ちでアニメを観ていました。

さて、本作は2019年にリブート版としてアニメシリーズ化されたそうなんですが、そちらは実は観ていません。
なので、本作のはじまりの部分やソニアという刑事の存在はまったくわからず。
なので、いきなり劇場版から入っても問題ないかという視点で観賞しました(というのもアニメシリーズがFilmarksの点数があまりにも低いので…)。

結果的には、妖怪人間ベムの世界観を知ってさえいれば全然楽しめるのかなといった感想です。
オリジナルでなくとも、亀梨くんが主演していた実写ドラマの世界観でも大丈夫でしょう。

冒頭には簡単にアニメシリーズで起きた出来事をおさらいしてくれます。

そんな中で、ベムはベルムと名を変えて人間社会に順応して、妻や2人の子供と一緒に幸せそうに暮らしていました。
まぁこの家族が何故かいるという設定の時点で色々と深読みしてしまいましたが。ちなみに妻のエマの声をしていたのが水樹奈々でした。

ベルムの職場では大親友で同僚のバージェス、上司のマンストール部長といった個性的なキャラがおり、職場ドラコ・ケミカルという製薬会社の社長ドラコが意味深にベルムに近づいてきます。
まず驚いたのがバージェスの声がKis-My-Ft2の宮田俊哉だということ。彼自身大のアニメ好きで水樹奈々ファンということを公言しているそうで、好きが高じて声優の仕事に初挑戦したようですが、実に上手い。
ベテラン声優のようなボイスアクトには驚かされました。まぁアニメ好きであるほど芸能人声優に対する風当たりの強さは知っているでしょうから本人はめちゃくちゃ練習したのかもしれません。
私は別に宮田くんのファンでもなんでもないので贔屓目も何もなく、純粋に上手いなぁと感じました。要注目のキャラです。

そして、上司のマンストール役が山寺宏一です。もう彼が声をやっているというだけで何かを感じさせますね。

で、このベルムの過ごす日常がとても奇妙なんですよね。
この辺りの仕掛けに気付けばあとはこの後の展開も大体予想がつくんですが、残念ながら予想通りの展開でした。

ヒロインのソニアの巻き込まれ型ヒロイン感は少し煩わしかったですが、結果的に悲哀に満ちた結末は心にグッときました。
リブート版とはいえ、オリジナルシリーズがきちんとした最終回を迎えられなかったということもあり、ベム、ベラ、ベロそれぞれが自ら向かいたい道を決めたという選択に感動せざるを得ませんでした。
アニメシリーズが評価低めなので観る勇気が湧きませんが、劇場版で最終章と銘打って公開された本作はとても良かったのではないかなと感じました。

※2021年自宅鑑賞203本目
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