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イングリッシュ・ペイシェントのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

4.8
Apr. 18th

Anthony Minghella監督・脚本
Walter Murch編集・音響担当
Ralph Flennes主演
Gabriel Yared音楽
1996年アカデミー賞作品賞、監督賞、助演女優賞、撮影賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞、録音賞、作曲賞受賞

The English Patient

完璧。まさに完璧の一言。なんじゃこれ、ここまで完璧に作れるもんかね?
二つの時間軸で紡がれるユニークなストーリー。
戦争シーンがほとんど出てこない戦争映画。
全く無駄のない編集。
キャラクターの感情を何倍マシにもする音楽。
エジプトとイタリアという舞台での第二次世界大戦前後の美術。
なんじゃこれ。半端じゃねぇな。

Anthony Minghellaの脚本が爆発してる。前半のクロスカットで時代設定と舞台設定を美術と衣装に一任し、二つのストーリーラインがクロスする第二幕の始まりからは、戦争という大きなテーマの中に、一つの恋愛のストーリーがシャープに突き刺さりはじめる。大きく分けて3つのストーリの往復のタイミングがばっちし。感情を橋渡しに時代を超えるプロットはまさに映画。

Walter Murch先生の編集も流石の一言。こんなに編集が気にならないのまじでありえない。一つ一つのカットがめちゃくちゃ自然。本当にありえないレベル。彼曰く視聴者が瞬きをする瞬間がカットするタイミングだという。まさにその通り、視聴者が自然と瞬きをするのに合わせてカットするところもあれば、意図的に数フレーム引っ張って瞬きをさせないような緊張感を作ったり、数フレーム食い込んで意図的に瞬きをさせたり。技術の塊。ほんで、Walter Murch先生のもう一つの武器がサウンド編集を行うということ。今回はミックスにも関わり、サウンドと編集が密に関係していた。最近彼の作品を見て思うのだが、彼の作品の音にはスペース感がある。動作や会話などの近い距離の音は、ショットごとに視聴者に近づいたり、離れたりするが、そのシーンの地盤を築くようなバックグラウンドのアンビエントサウンドや、音楽などは距離感が変化しない。それゆえ、一つのシーンは一つの色を保ちながら、それぞれのショットで変化をつけていくという手法が使われている。めちゃめちゃ細かい作業なんだろうなと思うぐらい、Foreyも使われているだろうし、なんかマジでありえない。

恋愛と言いながらも、許されない恋愛、そして、叶わない恋愛というテーマなので、失恋映画といっても過言ではない。それでも最後に残るのは、愛情。もちろん、この映画にも共通して、愛には理由なんてないというコンセプトは軸にあります。しかし、他の映画と違うのは、恋愛や猜疑心の感情を表す映画的表現がとても豊かで、その感情に吸い込まれるということだ。なんでそんな行動をしたかを明確に表現するのではなく、とても濃いストーリーテリングが、視聴者の感情を引き出す、といった感じである。それゆえ、もう一度見ても別のことに気づくし、違った感情になると思う。むしろ、同じ感情になるためには何百回って見ないといけいないのかもしれないっていうレベル。

これはベストフィルムだ。
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